● 地理
オーストラリアの国土面積は日本の約20倍。世界で6番目に大きな国であり、ひとつの大陸を一国だけで占めている世界唯一の国でもある。はるか昔にユーラシア大陸から分離したオーストラリア大陸には、コアラやカンガルーなど、ほかの大陸には存在しない珍しい動植物が生息している。
オーストラリアの気候は地域によって大きく異なる。北部は熱帯雨林性気候で、夏には雨期がある。エアーズロックで知られる中央部は砂漠性気候。南部は日本のように四季のある温帯性気候だ。東部は亜熱帯性気候で、年間を通して暖かく過ごしやすい。
オーストラリアは南半球にあるため、北半球にある日本とは四季が逆転している。春は9月ごろに訪れ、12月からは夏、4月以降は秋、6月ごろには冬が始まる。
● 歴史
17世紀初頭にヨーロッパ人が来航するまで、オーストラリアには先住民であるアボリジニとトレス海峡諸島民が住んでいた。1616年のオランダ人の上陸が歴史に残っているが、海外からの移民が始まったのは1770年にイギリス人探検家ジェームズ・クックが現在のシドニー近郊に上陸し、イギリス領を宣言した後といわれている。
以降オーストラリアはイギリスの植民地となり、流刑囚輸送地として約80年間に16万人の囚人を受け入れた。
19世紀中ごろには、金の発見によるゴールドラッシュと羊毛産業の発達で世界中から入植者が押し寄せた。移民の急増に対処するために欧州系白人に限定した法律が作られ、その後、オーストラリアは「白豪主義」となっていった。
1901年には6州が連邦をつくり、イギリス連邦の自治国となった。1927年、首都をキャンベラに移転し、1931年、自治権を得て事実上の独立国となる。
20世紀中ごろになると「白豪主義」が撤廃され、東欧、南欧、中近東諸国から移民を受け入れるようになったことで、多民族・多文化社会化に拍車を掛けた。1980年からは、それまでのイギリスの影響を受けたヨーロッパ文化と先住民アボリジニ文化、各国移民文化の共存と、それぞれの文化・価値観を尊重する「多民族主義」が政府主導で推進されている。オーストラリアは、移民や留学生にとって差別されることの少ない住みやすい国のひとつである。
● 政治
政治機構は、連邦、州(6州と2つの特別地域)、地方自治体の3つに分けられる。イギリス女王を元首とする立憲君主国で、王権の代行には連邦総督と各州総督が当たり、首相、各州首相を任命する。しかし実際には、法制度の改革により独立国家として機能しており、直接選挙によって国民から選ばれた連邦、州議会の上院、下院議員が、連邦および州内閣政府の閣僚と首相を選出する議会制民主主義。2010年6月に労働党党首に選ばれたジュリア・ギラード氏が、史上初の女性首相に就任した。2022年2月現在の首相は自由党のスコット・モリソン氏。
また、18歳以上には選挙人名簿への登録と、投票が義務づけられている。登録や投票を怠った場合、20~165.22オーストラリア・ドルの罰金が科せられる。
● 経済・産業
オーストラリアは、1990年代初頭以来、経済成長を続けている。過去30年間のGDPは順調な伸びを見せ、失業率も5.7%(2017年4月)、インフレ率も2.1%(2016/17年度)と低い。
かつては小麦や酪農品の生産国、豊かな鉱物・資源の産出国として第1次産業を中心としてきたが、政府は過去約15年にわたり、積極的な経済の自由化と改革に取り組み、グローバル化した新たな経済秩序の確立に努めてきた。この取り組みの結果、観光などのサービス業や、IT関連産業が著しく成長した。
● 民族性
オーストラリア人は、家族や友人との時間を大切にし、仕事とプライベートにはっきりと線を引いている。そのせいか、日本的感覚からすると期日などに対してルーズに見えることもある。また、フレンドリーな国民性で、誰とでも気軽にあいさつをし、スポーツ観戦や各種イベント会場で近くにいた人と世間話をして盛り上がることもある。男女平等主義が日常生活に定着しており、男性もキッチンに立ち、逆に女性も庭の芝刈りをする。
また、自然をこよなく愛するオージー(オーストラリア人の愛称)は、焼けつくような日差しにも負けず、水泳、ジョギング、ゴルフなど、あらゆるスポーツを楽しむ。観戦にも熱心で、ビール片手にラグビーやクリケットに熱狂する姿はいかにもオージーといった風景だ。街角のあちこちにあるパブには必ずテレビが設置され、どこでもスポーツ観戦ができるようになっている。
オーストラリア英語はイギリス英語を基盤としているが、独特のアクセントや言い回しがある。あいさつでは“Good day, mate.(グッダイ、マイト)”が有名だが、近年では誰もが使うわけではなく“Hello.”や“Hi.”のほうが多いくらいだ。バーベキューを“barbie(バービー)”、アフタヌーンを“arvo(アーボ)”、cup of teaを“cuppa(カッパ)”、ブレックファストを“breakky(ブレッキー)”と呼ぶなど言葉の短縮が多い。また、アメリカ英語では“take a shower”だがオーストラリア英語では“have a shower”、“take a seat”が“have a seat”となる。