● 地理
アメリカは、ハワイを含む50州とコロンビア特別区、さらにプエルトリコ、サモア、グアム島などのアメリカ領(以下、外領)から成る。外領とハワイ、アラスカを除くアメリカ本土(以下、本土)は北米大陸の中央部に位置する。本土の面積は、日本の面積の約25倍、世界で3番目に広い。本土だけでもPacific Time Zone、Mountain Time Zone、Central Time Zone、Eastern Time Zoneの4つの時間帯があり、ニューヨーク(東海岸)とサンフランシスコでは3時間の時差がある。また、西海岸から東海岸へ、直航便の飛行機に乗っても約6時間かかるほど広大な国土のため、本土の気候は位置する地域により大きく異なる。
東海岸では夏冬の温度差が激しく、特に大西洋沿岸では夏は高温多湿となり、冬には豪雪に見舞われることもある。
カナダに隣接する北部は、冬季は寒冷で降雪量も多い。メキシコに隣接する南部は熱帯に属し、1年を通して暖かく年間降水量の少ない地域が多い。ネバダ州、アリゾナ州では砂漠地帯もあり、乾燥した気候。太平洋岸に当たる西海岸北部のワシントン州やオレゴン州は、多雨で緑豊かな地域だ。西海岸南部は、雨が少なく夏季は高温で乾燥した気候になる。年間を通じて、朝晩の温度差があるものの
比較的温暖で過ごしやすい。
● 歴史
コロンブスが現在西インド諸島と呼ばれる場所に上陸し、「新大陸が発見」されたのが1492年。その後、イギリスやフランス、スペイン、オランダなどのヨーロッパ諸国が進出し始めた。
1775年に独立戦争が始まった。翌1776年7月4日に東部13州のイギリス系植民地が独立を宣言した。8年に及ぶアメリカ独立戦争の後、1783年にパリ条約が締結されて独立を達成。アメリカ合衆国が誕生した。
アメリカ合衆国の独立宣言には、自由や幸福追求の権利、機会均等などの原理がうたわれている。自分の夢を実現してくれるであろう自由の国にあこがれて、主にヨーロッパからたくさんの移民がアメリカに移住した。大陸内の発展を目指し、国土は西部へと拡大した。1867年にはアラスカを買収、1898年にハワイを併合し、現在の50州となった。
● 政治
アメリカの政治体制は、コロンビア特別区(ワシントンD.C.)に置かれた連邦政府と、50州の州政府から成る連邦共和制。州政府には合衆国憲法のほかに、州独自の憲法や法律があり、州ごとに強力な権限を持つ。教育分野もこの例外ではなく、実際の権限は州管轄下にある行政機関に委ねられている。
アメリカ議会は2院制で、任期6年で100議席(50州×2議席)の上院と、任期2年で435議席の下院から構成されている。議員のほとんどは民主党あるいは共和党の党員で、2大政党政治となっている。
アメリカは大統領制を採っており、4年に1度、夏季オリンピックと同じ年に、大統領選挙が行われる。選挙は、まず各州で行われる政党別の予備選挙、あるいは党員集会の結果から、各党が統一候補を指名する。そして、11月に大統領選挙人を選ぶ一般投票が実施され、次期大統領が選出される。
アメリカ大統領は“chief executive officer”とも呼ばれ、連邦議会、連邦最高裁判所と並んで強大な権利を持っている。また陸空海軍の最高司令官や外交の最高責任者なども兼任する。
アメリカ大統領に誰が選ばれるか、どの党が与党となるかは、その後の4年間のアメリカ国内だけでなく、世界の政治・経済などさまざまな分野に大きな影響を与える。2009年1月、バラク・オバマがアメリカ合衆国第44代大統領に就任した。無党派層からの支持を集めたオバマ大統領だったが、期待された雇用情勢も改善されず、支持率は低下している。
● 経済・産業
世界のGDPに占めるアメリカの割合は約22.5%で、3位の日本(約6.0%)を大きく引き離している(2015年のIMF予想)。2001年度までの好景気はITバブルとともに崩壊。9.11、イラク戦争などを経てサブプライムローンに起因した金融危機が起きた。雇用情勢も悪化するなかオバマ政権が発足するものの、巨額の財政赤字を解決することはできないまま。世界規模の景気悪化のなかで、アメリ
カ経済もまた回復の兆しは見えていない。
アメリカでは、広大な国土を生かした農業、工業、製造業などの各産業が盛んだ。農業では、中西部や五大湖周辺、西部の農業地帯で小麦やトウモロコシが生産されている。南部では綿花やタバコ、大豆が、カリフォルニア州ではトマトやレタスなどの野菜やフルーツの生産が盛んだ。農業もバイオテクノロジーの導入など、ハイテク化しており、品種改良が重ねられ、生産効率のよい新栽培法など
が導入されている。
北部地方と、ミシシッピ川の北部の地域では酪農業が主要産業だ。また、西部の乾燥地帯では牧畜業が盛んで、放牧されている牛を見掛けることも多い。アメリカの牛肉の生産高は世界第1位である。
アメリカにある石油や石炭、天然ガスといった豊かなエネルギー資源は工業発展の推進力となってきた。アメリカの産業の中では自動車産業や航空産業、ミサイル産業、宇宙開発産業、軍需産業などが突出している。このほかコンピューター関連産業やサービス業、金融保険業、不動産業も主要産業だ。
しかし、こうした産業発展に伴う環境問題も実は深刻である。例えばアメリカは石炭や石油の大量使用による二酸化炭素排出量が世界のワースト2であるうえ、地球温暖化抑制に対しては極めて消極的な姿勢を取っている。また、農薬・肥料の流出による水質汚濁、南西部の乾燥地帯での水資源の不足、砂漠化など、アメリカが抱える環境問題は数多く、早期の対応が望まれている。
● 民族性
アメリカは、世界各国・地域から移民を受け入れてきた国である。人種構成を見ると、白人を中心に、アフリカ系、プエルトリコ系、アジア系など、さまざまな人種が含まれている。そのため、アメリカは、いろいろな民族の人たちがひとつのポットの中で溶け合っている「人種のるつぼ(melting pot)」といわれている。
人種が違えば、ときには話す言葉や文化、習慣、考え方が違ってくる。アメリカで、バックグラウンドの違う相手に自分の意見をわかってもらうためには、「はっきり主張する」ことが大前提。意見が食い違えばディスカッションにもなるが、その場ですっきりと解決し、後々まで引きずらないことが多い。またアメリカというと自由の国と考えがちだが、ただ自由なだけでなく、それぞれがきちんと義
務と責任を果たすことが求められる。
共通言語は英語だが、最近ではスペイン語を話す人の数が急増しており、スペイン語を第2外国語として教えている学校も少なくない。特にメキシコに隣接するカリフォルニア州では、スペイン語が英語よりも多く使われている地域もある。