中国の教育制度の整備は、1976年の文化大革命以降より本格的に着手されてきた。外国人へ開放されている間口もまだ広いとはいえないが、近年、留学生の受け入れ態勢の整備も飛躍的に進み始めている。
日本と同じ9年制の義務教育
中国の教育制度は6-3-3-4制。1985年から導入された9年間の義務教育は、制度上は日本とほぼ同様である。初級中学は「初中」と呼ばれ、日本の中学校に相当。高級中学は「高中」と呼ばれ、高等学校に相当する。単科大学は「学院」、総合大学は「大学」と呼ばれるが、高等教育機関は「高等学校」と総称されるので注意が必要である。
中国の教育制度は文化大革命直後、70年代後半から急速に整備され始める。2005年には、全国の小学校への入学率は98.95%、初級中学校は94.1%に達している。青・壮年階層の非識字者率は5%以下に減少、90%以上の地区で9年制義務教育が普及している(中国大使館2005年データ)。しかし約13億人の人口と、多民族・多言語、沿岸地域と内陸部の経済格差、就学人口の急増から生じる学校側の受け入れ能力の問題など、さまざまな問題を抱えている。
就学前教育と初等教育
就学前教育は日本の幼稚園に相当。3歳から就学前の児童が対象となる。最近ではひとりっ子への過剰な教育が加速しており、設備が優れた私立幼稚園も出てきている。
初等教育は日本でいう小学校教育に相当。就学年限は5~6年で、満6歳以上の児童を対象とする。条件不備の所は教育の開始を7歳まで広げることができる。先の幼稚園同様に、ひとりっ子が多い今日、従来型の教育では満足しない父母たちのニーズと、2003年に策定された民営教育促進法が追い風となり、充実した設備やハイレベル教育を行う私立(民営)小学校が沿岸都市部では出現し、元来教育熱心な中国人の競争心をあおっている。
中国では、全人口のうち小・中学校生徒と就学前の児童が6分の1を占めているが、ここでも地域格差が顕著である。地方の農村地区では校舎の老朽化や教師・教材の慢性的な不足が深刻な問題となっており、2003年には農村地区の教育予算を大幅に拡大し、校舎の整備や、教科書の無料供与など、具体的な政策に力を注いでいる。経済格差とともに、今後の重要課題である。
中等教育
基本的には、将来、生産労働力の予備軍となる人材育成と、上級学校に進学できる高度な人材の基礎育成の2本を柱としている。また、政策上で選定された中高一貫制の重点中学もあり、名門大学進学を目指す生徒にとっては、中学から競争が始まることになる。
● 普通初等中学(日本の中学校に相当)
初等教育を修了した生徒を対象とする。修学年限は3年(または4年)。いわゆる日本の中学校教育に相当し、ここまでが義務教育となる。都市部の高校進学率に比べ、農村部の高等中学進学率はまだ低いのが日本とは大きく異なる点である。
● 普通高等中学(日本の高校に相当)
初等中学を卒業した生徒を対象とする。修学年限は3年。カリキュラムには外国語、ボランティア活動や社会実習なども含まれ、実践的な授業を行っているのが特徴的。思想政治科目も高等中学までは必修である。
中等職業教育
高校卒業後に主に就職を希望する生徒の育成を目的とする。膨大な人口を抱える中国での中等職業教育は、非常に特徴的であり、労働者層が厚い中国では重要な役割を果たしている。1966~77年まではすべてが普通中学であったため、卒業後に工場などで働く場合に専門の技術がなく問題となっていた。そのため新たな制度が導入された。その制度では大学入試に失敗しても就職できるように配慮され、普通高等中学とは分離して各種職業教育学校を設置。いずれも入学資格は初等中学卒業者で、修学年限は2~3年である(中等専門学校については修学年限3~4年だが、高等中学卒業後にも就学が可能で、その場合の修学年限は2年)。職業教育学校ではあっても大学入試である「普通高等学校全国統一考試」の受験は可能であるうえ、「対口招生」という、専門分野の一致する別枠入試を受けることができる。職業教育学校は、一般には以下のように分類される。
・農業中学校
・中等職業学校
・中等専門学校
・成人中等学校
・成人業務余暇初等中学および高等中学
・成人中等専門技術学校
高等教育
政治にも精通した高度な専門知識を持ち、社会主義「国家」を形成するための高度な人材育成が根本的な目的である。他国のように自由に自分の専門分野を究めたり、国際資格を目指したりという領域にはまだ達していないといわれている。
現在、大学に進学する学生の比率は中学生全体の42%と少なく、他先進国の教育レベルと比べてもかなりの格差がある。
● 大学
入学資格は高等中学卒業者または同等の学力を持つ者。中国の高等教育は、普通教育を行う普通大学と、成人向けに幅広い分野の教育を行う成人大学がある。普通大学は現在2263校となっており、そのうち卒業生に学士の学位を取得することができる本科大学は1079校、学士の学位を取得が認められない短期大学である専科大学が1184校である(2008年統計)。
高等教育(大学)への進学率は約23%となり、着実に高度な人材育成の効果が上がってきている。大学入試は毎年行われる「全国大学統一入試」で選抜され、高学歴志向も手伝ってし烈な競争が繰り広げられる。その背景には沿岸都市部と農村の格差、戸籍政策、基準値の不平等など、さまざまな問題が潜在する。しかし、大学改革は90年代に急速に進み、制度も整備され始め、各種認定資格などのガイドライン整備にも改革の兆しが見えてきている。
● 大学院
修士課程は2~3年、博士課程は修士課程修了後の2~3年。「研究生院」または「研究生部」と呼ばれ、日本の修士・博士課程に相当する。外国人留学生とともに、職業を持つ中国人も企業の「委託養成」などで大学院に籍を置くことができる。
成人高等教育
「成人高等教育」は働きながら教育を受ける制度。一般に教育部が許可した以下の大学での教育形態を指す。全国統一の入学試験で学生を募集、就労時間外または通信教育での教育となる。最終試験合格者には相当の学歴証明が授与される。広い国土と多様な就業形態をカバーする特徴的な制度で利用者も多く、中国人の学習意欲がうかがえる。
〈成人教育が受けられる主な大学/教育形態〉
・放送テレビ大学
・職員大学、農民大学
・夜間大学(大学夜間部):5〜6年の通信教育が主
・ 高等教育独学資格認定試験:大学本科4年制に課せられた25科目を科目別に試験し、合格した者にその科目の成績証明書を発行する。累積点数が基準値に達した者には、大学卒業に相当する学力認定(卒業証明)を授与する国家試験制度である。中国人であれば、年齢やこれまでの教育背景を問わずに参加でき、教育部(1999年)によれば、受験者数は1,000万人を超えるというデータが発表されている(合格率は約2.9%)。
教育部がすべてを管轄
中国では現行の教育法にもあるように、国家が各レベルの各種学校設置の国家基準を定めている。教育言語から、教育大綱、発展計画の策定、教員資格、留学条件から教育環境整備に至るまで、そのすべてを国家レベルで定めている。
文化大革命時期に停滞した教育は、1975年の文革終えん時期、第四回全人大にて教育部の復活が決定、ようやく教育部の活動が再開した。復活した教育部は国家直属の機関として、共産党と国家が定める方針を遵守し、教育の具体的な政策、学制、管理を行っていた。1985年には教育部は教育委員会へと格上げされ、教育を主管する国務院の総合部門として、教育体系改革を統一的に企画し、実行へと移していく。当初は26の司局、院内事業弁公室6、共産党支部2、直属の研究管理センター7、直属機関11の巨大組織であったが、現在は1998年3月第九回全国人民代表大会で国家教育委員会は教育部として改編され、教育と言語文字事業を掌握する国務院の構成部門として今日に至っている。
大学入試の募集・実施から大卒者の就職計画、学位の授与、各種資格の認定、教育領域の国際交流、留学生の受け入れと派遣まで、現在もすべてこの教育部が管轄している。
以下に触れる漢語水平考試も、この教育部が言語政策の一環として開始した国家試験である。
中国教育部実施「漢語水平考試(HSK)」
HSKとは、中国教育部が設けた「漢語水平考試」の発音(Hanyu Shuiping Kaoshi)の頭文字で、中国語を母語としない中国語学習者のための唯一の公認中国語能力認定標準化国家試験である。1984年から中国国内でスタートし、1991年に日本、シンガポール、オーストラリアの3カ国にて開始された。日本においては中国国家漢語水平考試委員会より委託を受け、HSK日本実施委員会(HSK日本事務局)が実施している。中国の大学進学の際に要求される中国語能力については、学部によりこのHSKの等級が要求される。基準に満たない者は、語学進修課程を履修することになる。もちろん、HSKの等級を持ってはいても、えりすぐりの学部生と肩を並べて学習するには、相当な努力が必要なことは言うまでもない。
HSKは、ヨーロッパにおいて外国語学習者の能力評価時に共通の基準となるCEFR(ヨーロッパ言語共通参照枠)と合致するように2012年に改定された。筆記試験と口頭試験に分かれ、筆記試験はリスニング力、読解力、作文力の3パートからなる。
HSK成績表は外国人留学生が中国の大学に入学するための証明となるもので、有効期間は、受験日から起算して2年である。各級を受験する出願方式で、級等が上がるにつれ難易度が増す。
●HSK日本実施委員会(HSK日本事務局)
http://www.hskj.jp/
外国人留学生の受け入れ
教育制度の整備は、1976年の文化大革命以降、本格的に着手されてきたが、その整備内容はさまざまな問題を抱えており、他国の教育事情と比較することはやや乱暴であるといえよう。欧米では数々の国際級資格認可、資格認定など、広く外国人への門戸が開放されているのに対し、中国はまだ国内教育需要に応えきれていないことから、外国人へ開放されている間口も決して十分とはいえない。
ただし、この10年来、中国の外国人留学生の受け入れ態勢は飛躍的に整備されてきている。外国人留学生の受け入れは1950年に東ヨーロッパから33人の留学生を受け入れたのが最初とされる。日本人留学生に限定してみると、日中国交回復後、特に80年代初頭から本格的に始まっている。受け入れ態勢、整備は飛躍的に改善されているが、それでもまだ歴史は浅い。
学歴教育(学位取得)と非学歴教育
現在、外国人に開放されている課程は大きく学歴教育(学位取得)と非学歴教育の2種類に大別される。基本的には各大学に留学することになるが、受け入れる大学側にも留学生の募集資格が必要となる。政府が認可する大学でしか、留学希望者は学ぶことができないシステムになっている。特に学位取得の場合は、学位を授与できる大学、学部(系)に外国人枠で入学することになる。専科生(短大)、本科生(学部生)、碩士研究生(修士課程)、博士研究生(博士課程)に門戸が開かれている。また、入学時には一定の中国語能力が求められる(HSKの等級参照)。中国語で学部の聴講をすることになるので、比較的高い中国語能力が必須となる。この中国語能力を一定期間のカリキュラムの下で学習する学生は漢語進修生と呼ばれている。漢語進修生は学位取得には相当しない。ほかに非学歴教育と呼ばれ
るものでは、学部聴講生、大学院研究生、研究者がそれに相当する。
● 専科生
中国の専科大学の学制とカリキュラムに基づく。修学年数は2~3年で、中国人学生と同じクラスで受講。試験に合格すれば専科卒業証書が授与される。
● 本科生
中国の全日制大学の学制とカリキュラムに基づいて受講。修学年数は4~5年で、授業は専攻によって中国人学生と同じクラスで受けるか、あるいは単独でクラスを編成。単位を満たし、試験に合格して卒業論文を提出すると、学士学位が授与される。
● 碩士研究生
中国の修士課程の学制とカリキュラムに基づく。修学年数は2~3年で、指導教官の指導の下で、所定のカリキュラムを履修。試験、論文・口頭試問に合格し、卒業論文を提出すると碩士学位が授与される。また、一部の大学では直接外国語で履修できる大学院課程を設けている。
● 博士研究生
中国の博士課程の学制とカリキュラムに基づく。修学年数は2~3年。指導教官の指導の下で、所定のカリキュラムを履修。試験、論文・口頭試問に合格し、卒業論文を提出すると博士学位が授与される。
● 普通進修生(学部聴講生)
専門により中国人学生と同じクラスで授業を受けるか、または留学生専用でクラスが設けられる。修学年数は1~2年。試験に合格すれば修了証書が発行される。
● 高級進修生(大学院研究生)
研究課題に基づき、学校側が指導教官をひとり指定してその研究を指導。修学年数は1~2年で、研究計画を修了すれば修了証書が発行される。
● 研究者
特定の研究テーマに基づき、学校側が担当教師をひとり指定、研究者本人の自主研究を主として研究を進め、研究期限は研究テーマによって定められる。
● 漢語進修生(言語進修生)
中国の高等学校卒業以上の学力を備える者のための中国語学習コース。学習年数は通常1~2年で、学習修了後、修了証書が発行される。
● 短期生
中国語の習得を目的とした語学講座。語学のほかに、文化講座や歴史講座など、各校でさまざまな内容が準備されている。短期間なので入学のハードルは低く、年齢も職業も制限はあまりない。修了後には受講証明書などが発行される。
最近では留学生のために、語学履修を1年目に組み込み、3年で本科単位が履修できるように設定された本科制度や、中国語と英語の両方を学ぶカリキュラム、MBA課程など、新たなカリキュラムを設置する大学も増えている。
外国人指導者・研究者向けプロジェクト
● 外国人中国語教師短期研修プロジェクト
中国語を教える外国人教師の、中国での短期研修を助成する。研修期間は4週間。応募者は、大学本科卒業以上の学力を持ち、3年以上連続して中国語教育に従事する者で、年齢は満50歳以下、実施時期は7~8月。
● 中華文化研究プロジェクト
中国文化の研究に従事する外国人学者の短期訪問、中国人の教官の指導に基づく研究、あるいは中国人学者との共同研究を助成する。指定の大学で中国人教授、学者とともに研究を展開する。期限は5カ月以内。応募者は、博士学位あるいは助教授以上に相当する地位・職位を持ち、中国言語、文化、歴史などに関する専門書もしくは論文を出版、発表したことがある者。年齢は満55歳以下で年2回の募集がある。
● 中国政府友誼賞
教育、研究、著作などの分野において、突出した貢献、功績が見られる外国人を表彰する。1991年に創設。毎年50人の外国人専門家が受賞している。
「211工程」による国家重点大学構想
中国は、大学教育の整備を目指した「211工程」を実施してきた。211工程の主な内容は、21世紀までに、100の重点大学と重点学科を指定して、それらが国際社会に通用するレベルとなるように重点的に予算を配分することである。一定の基準を設けて、学部あるいは大学全体を評価し、現存する大学から選抜する。重点大学の選定はすでに終了したが、予算は今も配分されている。「211」という名称は、21世紀の「21」と「100の大学」の冒頭の「1」との組み合わせによる。211工程の構想は、国務院が1993年に打ち出した「中国教育改革と発展綱要」に基づくもので、重点大学の指定は、1996年の「第9次五カ年計画」と同時に開始された。2001年時点で、中国全土から98大学が国家重点大学として指定され、それらの大学に属する602学科が国家重点学科として指定を受けた。現在は109校が指定されている。
この「211工程」は、中国の大学に競争原理を導入し、大学の質の向上、学内行政管理の効率化に大きく影響した。法人組織化が進み、学内に自主運営のメカニズムができてきたのである。これまで大学の負担であった食堂や学生寮などのアウトソーシングが進み、自由主義競争の原理が導入されている。90年代の大学改革のキーワードは3つ。①「共建」(中央と地方が共同して大学の建設に力を入れること。組織機構の一部権限が地方に委ねられたことからくる)、②「合併」(多すぎる単科大学を合併、共益性を高める)、③「合作辧学」(大学間の単位互換、教育施設の共同利用の促進)である。留学生にとっても目に見えて改善が感じられたのはこの政策の影響でもある。現在は90年代後半の「第3次院系調整」の影響で、大学の「枠」を超えた統廃合が加速している。
大学入試制度
中国の大学の入試は、上海や北京以外の地域では、全日制大学の入学試験「全国大学統一入試」で行われる。北京、上海など、大学が極端に集中している都市では、全国統一試験ではなく、大学が独自に大学入試を実施している。全国大学統一入試は、「全国普通高等学校招生入学考試」として1978年に開始され、2003年からは6月に一斉に実施されている。2000年の入試から試験科目を減らし、国語、数学、外国語の3科目+X方式が導入されている。Xは実施する大学と所属する省などの教育委員会が1~2科目追加して試験科目を決定する。2008年から「全国大学統一入試」と改称された。
受験者は志望校を選択できるが、選抜は点数順に各大学が行う。合格者の選抜は国家重点大学など志願者が多く合格最低点の高い有名大学、地方省所属の大学、高等専科学校といった順に成績と「档案(たんあん)」と呼ばれる調査書により選抜される。各省に志願者を成績順に定員の120%まで選び、その中から各大学の委員が選抜。また、戸籍制度に縛られているので、移動の自由が制限され、出身地や受験場所の違いで合格に格差が生じる。北京大学や復旦大学のような超一流大学は、まさに地方学生にとってはあこがれの的であり、入学した学生たちは誇り高く、社会的評価も他大学とは一線を画す。
大学の定員枠は政府が決める仕組みになっている。以前は国が大卒者全員の就職の世話をすることを前提に、募集定員を算出し、国家公務員や特定機関の定員採用によって大学の定員数は左右されていた。同時に大学進学は、国家公務員や地方公務員になることを約束されていることでもあったのである。よって大幅な定員枠増も困難であった。
1997年から一部大学では、入学募集定員の3%を別枠で職業学校(職業高校、中等専業学校、技工学校)の卒業生を対象とし、入試が行われている。これは専門分野が一致した職業学校からの入学枠で、「対口招生」と呼ばれている。成人高等教育機関の入試「成人高等学校全国統一考試」も別途実施される。
1999年に、政府は大学募集定員を3割拡大することを決定。7月に実施されていた統一試験も6月に繰り上げられ、学費も跳ね上がった。失業率が問題になっている中国の若者にも危機感は募り、高学歴願望へと発展、受験過熱は今では高等中学入試にまで影響している。
中国の学位制度
中国の学位は、学士(学士)、碩士(修士)、博士(博士)の3種類。哲学、経済学、法学(政治学、社会学、民族学などを含む)、文学(言語学、芸術学、図書館学を含む)、史学、理学、工学、医学、管理学、軍事学の10学科。学位は、国が認可した学位授与権を得ている大学でのみ授与できる。大学の学位授与権は国務院の学位委員会(Office of Academic Degrees Committee of the State Council)が認証する。
特に大学院については、どの大学のどの専攻が学位を授与できるのか、どの教授が指導できるのかが公表される。碩士(修士)の場合は、学位授与できない大学も募集はできるが、卒業するにはほかの学位授与できる大学に論文を提出することになる。
学位取得は超エリートの証であり、国家幹部や上級公務員への道、海外留学への道など、さまざまな門戸が開かれる。募集枠が拡大されたとはいっても、まだまだ大学進学、学位取得は超難関である。学位証書の偽造が横行し、ビジネスになっている現象から見ても、その社会的評価がいかに高いかがうかがえる。
【Column】北京大学と復旦大学
北の北大、南の復旦として、よく比較される。両大学とも国家重点大学。北京大学は特に最高学府として知られ、「新文化運動」の出発点である五・四運動の担い手となった、中国近現代史を語るうえで最も重要な大学である。復旦大学においてはこの北京大学で起こった五・四運動を上海で推し進めるべく、学生連合会を組織し、常に上海の学生の先頭に立ってきた。以降1989年の、学生による民主化運動「天安門事件」でも両大学は学生を大々的に組織し、常に先駆的な役割を果たしてきている。いずれも長きにわたり、有名文学者、歴史に残る革命家、政治家たちが教壇に上がった名門校で、中国国内でも早くから国際的に評価されている。
当然のことながら、現在も超難関校。学生たちは誇り高く、その親たちも子息の入学には生涯をかけるといっても過言ではない。このほかにも清華大学、上海交通大学、人民大学といった著名な大学がある。