NAFL20巻 よくある質問
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該当ページ | 質問 | 回答 |
p.17 | 「アカルチュレーション」「リカルチュレーション」とは何ですか。 | 「アカルチュレーション(acculturation)」とは、「文化変容」ともいわれ、広い意味では、ある人が自分と異なる文化を持つ集団に接触した時、自分の文化(あるいは相手の文化)に変化を引き起こすことを指します。例えば、ある文化的規範を持つ集団の中へ、異なる文化を持つ人が移民などとして入っていき、そこで文化生活を営もうとした場合に、集団の文化に適応しようとして自分の文化的規範を変えたり、あるいは集団に変化をもたらしたりすることなどです。 一方、「リカルチュレーション(reculturation)」とは、アカルチュレーションの過程を経た後に、帰国などの理由で元の文化環境へ戻った時に、もともとあった自文化の特色を取り戻していこうとする過程を指します。 |
p.48 | 3-14 間違い安いコソアドについて質問がございます。 学習者へ説明する場合、以下の様な理解・説明で正しいでしょうか。 医者でのやりとり:医者の起点として考える為、「ここ」ではなく「そこ」と言わなければいけない 会った友達に関して: 「その」は「あの」よりも具体的であり、話の対象が明確な場合は「その」を使用する。 |
指示語の用法を把握しておくと、理解が深まるでしょう。先に、第11巻『日本語の文法―応用』のp.70-74「第6章第2節 指示語の使い分け」をお読みになることをお勧めします。 最初のご質問の医者とのやりとりで出てきた「ここ」「そこ」について、このやりとりでは、医者と患者は患者の「患部」を指示しているわけですから、これは現場指示の用法です。そして、またこの場合には、話し手と聞き手が異なる位置にいますから、現場指示(2)対立型(第11巻p.72「6-5 現場指示(2)対立型」)のルールで考えていくことになります。このルールに則れば、自分の近くにある物には「コ系」、相手の近くにある物には「ソ系」を用います。まず、医者が患部を探りながら「ここですか。」といいますね。これは実際に医者が患部あたりを触って言っているので、体は患者のものではありますが、医者が手で触っている以上、患部は医者により近い位置にあります。そのため、ここはコ系の「ここ」が使われることになります。 そして、次に患者が「はい、そこです。」と、自分の体なのに「ここ」と言わないのかという点についてですが、これは医者が今その患部を触っていて、医者のより近くにあるわけですから、相対的に患者自身はその患部から遠いわけです。そのために「ソ系」の「そこ」を使って応答します。つまり、現場指示の場合にはある物が誰に所属しているかではなく、指示される対象がその瞬間にどちらにより近いかによって「コ系」を使うのか「ソ系」を使うのかが判断されるわけです。このような現場指示のルールを学習者に伝えなければなりません。 次に、「あの人は…」の例ですが、これは「きのう友達に会いました。」という前文に登場した「友達」を指示していますから文脈指示の用法(第11巻p.73「6-6 文脈指示」)です。この用法では、「話し手と聞き手が指示される対象を知っているかどうか」がポイントになります。二人とも指示される対象を知っている場合にはア系が、片方しか指示される対象を知らない場合にはソ系が使われます。現場指示の用法で考えると「自分からも聞き手からも遠くにあるもの」は「ア系」で指示しますから、学習者は「あの人」などと「ア系」で指示しがちですが、これは文脈指示の用法であり、話し手しか「友達」を知らないわけですから、「ソ系」すなわち「その人」で受けなければならないわけです。逆に、20巻 3-13で出てきた事務の女性と佐々木先生のやりとり(これも文脈指示の用法です。)には「あれ」と「ア系」が使われていますが、この場合は事務の人も佐々木先生も指示される対象を知っているからこそ「あれ」が使われたわけですね。学習者にはこのように文脈指示の場合には話し手聞き手ともに指示されている対象を知っているかどうかで指示語を選択する必要があることを伝えるとよいでしょう。 |