NAFL17巻 よくある質問
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該当ページ | 質問 | 回答 |
p.88 | 「Ru-verb」「U-verb」、「子音動詞」「母音動詞」、「強変化動詞」「弱変化動詞」とは何ですか。 | Ru-verbとは、一段動詞またはIIグループの動詞を指し、U-verbは、五段動詞またはⅠグループの動詞を指しています。なぜかと言うと、Ru-verbは、「食べる taberu」「着る kiru」のように“ru”で終わり、U-verbは、「行く iku」「話す hanasu」のように“u”で終わるからです。テキストの説明にあるように、教科書によって動詞の分類の名前が違うことがあります。少し例を挙げてみます。 五段動詞 - 子音動詞 - U-verb - 強変化動詞 - Ⅰグループ 一段動詞 - 母音動詞 - Ru-verb - 弱変化動詞 - IIグループ 呼び方は違いますが、指しているものは同じです。「不規則動詞」に関しては「不規則動詞」や「Ⅲグループ」「irregular」と呼ばれているようです。 子音・母音動詞やU-verb・Ru-verbという呼び方は、それぞれの動詞の活用の仕方の特徴からきています。 強変化動詞というのは、語幹に一定の規則で母音を付けた形に変化するもので、弱変化動詞というのは、語幹に一定の語尾を付けた形に変化するという意味です。 授業に入る前に、授業で使うテキストではどのように呼ばれているのか、確認しておくことが大切です。 |
p.92 | 金田一によるアスペクトの観点からの動詞の分類について 1)「似合う」はテイル形(似合っている)で状態の継続を表すので第4種の動詞と思っているのですが、状態動詞とする解釈も多く見られます。状態動詞だとするとテイル形は使えないですが、この2種類の動詞区分の見極め方やコツを教えてください。 2)「継続動詞」と「瞬間動詞」についても、動詞によっては 区別に迷ってしまいます。 例えば、太る、痩せる、乾くは、どう考えても継続期間が長い(太りつつある、痩せつつある、乾きつつある)ので継続動詞だろうと思っていると、瞬間動詞とする解釈も多く見受けられます。一方、打つ、振るなど、瞬間で終わりそうなものが継続動詞だとする解釈も見受けられます。 金田一の分類ですべてを分類できないことが分かったため修正をしたとの記事も見かけますので、整理する意味合いも含めご教示のほどお願いいたします。 |
まず、2)のご質問「継続動詞」と「瞬間動詞」について確認してみます。この二つの分類は現在では、「継続動詞=動作動詞」、「瞬間動詞=変化動詞」と呼ばれることが多い動詞の分類です。テキストでは第11巻「日英の対照研究」p.92にて、「継続動詞」「瞬間動詞」という名称が使われていますが、テキスト10巻『日本語の文法―基礎』では、動作動詞、変化動詞という名称が使われていて、pp.91-94にてこの二つの詳しい見分け方の説明がありますので、こちらが参考になるかと思います。11巻『日本語の文法―応用』のpp.91-95においても関連の説明がありますので、ぜひ確認してみてください。 ご指摘の通り「継続動詞」、「瞬間動詞」という名称は「瞬間動詞」と呼ばれる動詞の中に、「太る」「痩せる」のように瞬間的に起こるわけではないものも「瞬間動詞」と呼ばなければならないという問題点があったこともあり、後に「動作動詞/変化動詞」という名称が生まれました。この名称の下で、「継続動詞」、「瞬間動詞」の違いを捉えた方がわかりやすいです。 まず、動作動詞(継続動詞)とは「動作を表すことを本務とする動詞」のことで、「~ている」をつけると「動作の継続」(「動作の進行」ともいいます)を表します。一方、変化動詞(瞬間動詞)とは「「変化」を表すことを本務とする動詞」で「~ている」をつけると「変化結果の継続」を表します。 動作動詞、変化動詞というのはアスペクトの観点からの動詞分類ですから、アスペクトを表す表現である「~ている」を動詞につけることでその分類を判断していきます。「太る」という動詞についてこれを動作動詞であると考えると、「太っている」と言ったとき、「太る」という動作(作用)が継続していることを表すことになってしまいます。目の前でだれかがどんどん大きくなっていくようなイメージです。ただ、通常「太っている」というのはそのような状態ではなく、ある人が「既に太った状態」であることを表すのに使われる表現です。つまり、「太っている」というのはある人にどこかの時点で「太った」という変化が起き、その後、「太っている」という変化状態が継続しているということになるわけです。そのため、「太る」は変化動詞であるということになります(「痩せる」、「乾く」も同様)。ちなみに、「太る」を「瞬間動詞」という言い方で捉えるとすると、瞬間的に「太った」という動作(作用)がある時点で起き、その結果状態が続いていくと解釈するわけですが、やはり「太る」という動作(作用)は瞬間的に起こるとは捉えにくいために、この名称に批判が出たわけです。「打つ」「振る」については例えば「看護師が患者に注射を打っている」「聴衆が旗を振っている」と言った場合これは「打つ」「振る」という動作が継続していることを表します。ですから、これらの動詞は動作動詞ということになります。 続いて1)についてです。「似合う」ですが、これは金田一の分類に従えればご指摘の通り、第4の動詞ということになります。「似合う」が状態動詞と扱われているものも見かけるというのは「状態動詞」の定義が金田一の動詞分類における「状態動詞」と違う定義の下で分類がなされているからかと思われます。金田一の分類はアスペクトの観点から見た動詞の分類ですが、動詞の分類には他にもテンスの観点から動詞を分類したものがあります。その場合においては動詞は運動動詞(「動き」を表す動詞)と状態動詞(「状態」を表す動詞)に分類されます。その分類に従えば「似合う」は「動き」ではなく「状態」を表すため「状態動詞」に分類されるといえるでしょう。運動動詞と状態動詞については第10巻「日本語の文法―基礎」pp.85-87で説明されていますので、こちらもぜひ確認してみてください。以上のように、動詞の分類には様々な観点からの分類が存在しますから、その点をしっかり確認していくというのが大切です。 |
p.127 | 0-4 受給表現と待遇表現の説明の中に、「あげる側」は、「もらう」側の「うれしい」「ありがとう」という感情を期待していることがわかるような場面をつくる必要がありますと書かれています。しかし、その後の説明では「また、目上の人に対しては、『荷物、持ってあげましょうか』と言うより、『荷物、お持ちしましょうか』と言うほうがよいということなども、すんなり理解できるようになります。」とあります。 うれしいという感情を期待して、目上の人にも「荷物、持ってあげましょうか」という表現が正しいと思っている外国人もいると思いますが、この様な場合、どのような説明によって、「お持ちしましょうか」という表現の方が適切と教えるべきでしょうか。 |
「あげる」はテキストにあるように「うれしい」「ありがとう」という「もらう」側の感情を期待する表現ですが、これはもっというと、相手に恩を着せるということです。「あげる」という表現は、「私がこれをしたことであなたはうれしいでしょう?感謝してくださいね!」と期待する気持ちを表すのです。ですから、このような気持ちを表すべきでない場面で「あげる」を使ってしまうと、非常に恩着せがましい表現になってしまうわけです。たとえ「もらう」側がその行為を受けて、うれしいと思ったとしても、例えば「目上の人」に対しては、「自分がそのような反応を期待している」ということを言葉として示すべきではありません。ですから、「あげる」を授業で導入する際には、「あげる」を使うことが適切な場面とそうでない場面を学習者に理解させることが重要になります。 上記のことを学習者に理解させるためには、テキストにあるように「あげる」を教える際には「「あげる」側が、「うれしいでしょう」と念を押す」という点を強調することが重要かと思います。「あげる」の表現の後に、心の声というのがわかるように小さい声で「うれしいでしょう?ね?ね?」のように加えてみてもいいかもしれません。「荷物を持ってあげましょうか?(うれしいでしょう?ね?ね?)」のように恩着せがましさが伝わるように工夫すれば、「目上の人に対して、このように恩着せがましい言い方をするのはおかしい」ということに学習者が気づくはずです。 |
p.135 | 「うなぎ文」とは何ですか。 | 食堂で注文する時に言う「僕はウナギだ。」「私は、おすしです。」という文は、「僕は学生だ。」「私は吉田です。」という文と形は同じです。しかし、意味は異なっています。前者の文は「僕=うなぎ」ということではなく、「僕はうなぎを注文する/食べたい」といった意味です。このような意味で使われる場合の文を「うなぎ文」というのです。 よく「日本語は非論理的な言語だ」などと主張する人が、このうなぎ文を引き合いに出すことがありますが、実際には、中国語、韓国語、英語にも同じような表現が存在していることが報告されています。 詳しくはこちらもご参照ください。 <参考文献> 奥津敬一郎(1978)『「ボクハウナギダ」の文法-ダとノ』 くろしお出版 |