中等教育機関でも、寮の設備を整え留学生受け入れに力を入れている学校も多い。また、短期の大学留学、語学留学の制度やプログラムも充実している。
留学生の受け入れに力を入れる中等教育機関
アイルランドの義務教育期間は6~15歳。ただし、4歳児の65%、ほとんどの5歳児が就学し、初等教育(primary education)の中のそれぞれJunior Infants、Senior Infants のクラスに入る。初等教育修了後に進む中等教育(second level education)は、中学/高校(secondary school)、職業学校(vocational school)、両方の機能を持った統合学校(comprehensive school)で提供される。中心となるのは中学/高校である。アイルランド国内には、寮設備の整った中等教育機関が50校以上あり、その多くが長年にわたり留学生の受け入れに力を注いできた。
中等教育は、3年間の前期課程(junior cycle)と2~3年間の後期課程(senior cycle)とに分かれ、前期課程までが義務教育期間となる。前期課程修了時には国が実施する試験があり、合格すれば下級証書(junior certificate)が授与される。その後は、1年間の移行学年(transition year)が設けられ、さまざまな教科を体験学習したり、ボランティア活動など社会経験の時期に充てたりすることができる。多くの学生がこれを経て後期課程へ進む。後期課程修了時にも国が実施する試験があり、合格者には中等教育修了証書(leaving certificate)が授与される。
高等教育
高等教育(third level education)の中心を担う総合大学(university)はすべて国立校で、幅広い専攻分野において、学士号(bachelor’s degree)、修士号(master’s degree)、博士号(doctoral degree)を授与している。このほか、学部・大学院レベルの資格(diploma、certificate)の取得コースもある。
アイルランドでは、教育は国の発展にとって最も重要な役割を担うものと位置づけられ、義務教育および大学の学部課程における教育は、一部を除き無料で国民に提供される。このような教育への「投資」は、世界でもトップレベルの就学率を実現した。現在、国民の約81%が中等教育レベルの教育を修了し、このうち約55%が高等教育機関へと進学している。
国家レベルで教育の質をチェック
アイルランドでは、教育科学省(Department of Education and Science)という日本の文部科学省にあたる機関が国の教育の一切を管轄している。学位の授与に関しては、総合大学はそれぞれ自ら学位を授与する権限を持っているが、職業・専門的な教育を行っているカレッジに関しては、Dublin Institute of Technology(DIT)を除き、教育機関のレベルによってそれぞれに資格授与審議会があり、その審議会を通して公的な学位や資格が授与されている。
ダブリン市の高等教育カレッジ数校が合併して生まれた高等教育機関DITは、総合大学同様に独自で学位を授与する権限を持っている。
専門資格に関する授与機関
● QQI (Quality and Qualifications Ireland)
カレッジへの学位授与の評議会HETAC(Higher Education and Training Awards Council)と公的資格授与の評議会FETAC(Further Education and Training Awards Council)がQQI に統合された。
http://www.qqi.ie/
〈語学留学に関する認定団体〉
● ACELS
アイルランド政府は、ACELS(The Advisory Council for English Language Schools)という教育科学省の諮問機関を設けて、語学学校の質の維持に努めている。ACELS では、各校の授業内容、設備、経営方針、宿泊施設などを審査し、基準を満たした学校にのみ政府の認可を与えている。ウェブサイトでは認可校のリストなどを見られる。
http://www.acels.ie/
● MEI ( Marketing English in Ireland)
MEIは、政府観光庁と協力してアイルランドでの語学研修をプロモートしている機関。
ウェブサイトではACELS 認可校の中から自分の目的に合ったMEI のメンバー校を検索できる。英語教師訓練コースに関する情報も掲載している。
http://www.mei.ie/
〈アイルランドの教育関連機関の情報源〉
● Department of Education and Skills
アイルランドの教育科学省。ウェブサイトにはアイルランドの教育情報のほかに地域別の教育機関を検索できる機能もある。
http://www.education.ie/
● Education Ireland
アイルランドの大学、公立、私立カレッジなどの情報を発信する機関。ウェブサイトには大学別、専攻別に取得可能な学位、資格などの情報を掲載している。
http://www.educationireland.ie/
短期留学プログラム
アイルランドの大学で短期間学ぶ方法としては、在籍している日本の大学の交換留学制度を利用したり、study abroad(単位取得可)、visiting student、occasional student と呼ばれる聴講生として学んだりする方法がある。
また、多くの語学学校が、夏期休暇のシーズンに合わせてバケーションコースを開講している。開講期間は2~4週間程度。通常、1日3~4時間の英語の授業とともに、アイルランドの文化・伝統に触れる文化活動や、文化施設訪問、スポーツなどのアクティビティーが組まれている。
大学院留学
アイルランドの大学院で得られる学位は修士号と博士号。一般的に実践的な学問分野は修士号、アカデミックな分野は博士号が、それぞれの教育課程の中心となっている。どちらのコースも入学するには高い学業成績と英語力(IELTS Band 6.5以上)が要求される。
修士号取得コースで学ぶには、通常、関連する分野で学士号を取得している必要がある。優等学位(honours degree)でsecond class 以上の成績を条件としていることも多い。また、成績が条件に満たない場合は1年間の進学準備コース(foundation course)の受講を求められることもある。