● 地理
イギリスの国土は日本よりやや狭く、全体的に平たんで、高い山もあまりない。イギリスは北海道よりも北に位置するが、メキシコ暖流が流れているおかげで、年間を通じて温暖である。
イギリスというと「雨」のイメージが強いが、梅雨はなく、夏は乾燥していて快適である。ただし、移動性低気圧の影響で1日の天気は変わりやすく、晴れていたと思っても突然ぱらぱらと雨が降り出すこともある。
イギリスは、イングランド、スコットランド、ウェールズ、北アイルランドの4つの地域から構成されており、地域ごとに議会や地域の旗、文化などが異なる。日本では、イギリスは“England”、イギリス人とは“English”だと思っている人が少なくない。国の正式名称は“The United Kingdom of Great Britain and
Northern Ireland”で、イギリス人のことは“British”と呼ぶ。しかし、当のイギリス人たちは、自己紹介などの場で、“I’m Scottish.”のように出身地域を明確に答えてくることも多い。また、例えば、サッカーやテニスの試合では、イギリス国旗とは違うイングランドの旗(白地に赤の十字)を振っている人を見掛ける。これらは出身地に誇りを持っていることの表れである。言葉の面でも、ウェールズの人口の約5分の1はウェールズ語を話すなど、各地域の特色がはっきりしている。
● 歴史
紀元前、ヨーロッパ中部や西部に暮らしていたケルト族が、勢力を広げ、やがてブリテン島、アイルランド島を征服した後、シーザー率いるローマ軍が2度にわたり侵略を試みるが失敗。それから約100年後、ローマ皇帝クラウディウスが再度侵攻し、現在のイングランド地方の辺りを制圧した。このとき、テムズ川河口に、後のロンドンの原型となるロンディニュムがいったんは生まれたものの、ローマ軍とウェールズ地方の軍勢との争いで、街は破壊された。
5世紀初頭まで続いた古代ローマによる支配は、ローマ軍が撤退したため、大陸から侵入してきたアングロサクソン族に取って代わられる。ケルト族は、ウェールズやスコットランドに追われ、アングロサクソンは7つの王国を建設。10世紀に、そのうちの1国ウェセックス王国がほかの6王国を統合した。
その後、ローマ法王による破門、マグナカルタ、100年戦争、ペストの流行などにより、いったんは王の権威は失墜し、国も疲弊する。しかし、バラ戦争により貴族が没落し、さらに16世紀に入って英国国教会の設立により財源を確保し、王が次第に復権。18世紀の産業革命などを経て、19世紀後半のビクトリア王朝時代にイギリスは大英帝国として絶頂期を迎える。この間、1284年にウェールズ、1707年にスコットランドを併合し、グレートブリテン王国となり、さらに1801年、現在のアイルランドを併合し、現在の連合王国の形が築かれた。
● 政治
イギリスの国家体制は、議会制民主主義に基づく立憲君主制だ。特に議会制民主主義に関しては世界最古の歴史を誇る。
国家元首は、即位後60年以上になるエリザベス2世女王陛下。ただし、女王の権力の多くは名目上のもので、通常は内閣の助言などに従い行使される。
最高権威機関は、立法権を有する議会である。イギリス議会は上院と下院の2院制を採っている。
また、政党は保守党と労働党の2大政党政治が根づいているが、2011年には第三勢力だった自由民主党が連立政権のメンバーとなった。1979年から1997年までの約18年間続いた保守党政権から、1997年に労働党政権に交代した。首相となったトニー・ブレアは、イギリスの国際的イメージアップに力を入れ、1999年と2006年には留学生受け入れ計画“prime ministers initiative”を発表。現在も海外からの留学生を積極的に受け入れている。2017年7月現在は保守党のテリーザ・メイが首相。
● 経済・産業
OECD(経済協力開発機構)が発表した経済指標によれば、イギリスの実質GDP(国内総生産)成長率は、2004年までは上向きに推移してきた。しかし、2004年半ばより減速し始め、近年は低い伸び率で推移している。
1990年代前半まで2けた台を記録していた失業率は、2016年度は4.8%と低く、雇用環境は良好な状態である。
産業面では、サービス産業が好調である。家計消費も活発。反対に、ユーロに対するイギリス・ポンド高が影響して輸出産業が振るわず、このため製造業が不振となっている。
● 民族性
民族はアングロサクソンが主流を占めているが、移民の歴史も長く、多民族国家である。また、全人口の約半数が英国国教会派に属している。
イギリス人の生活スタイルは独特。古いものを大切にして、なかなか新しいものを買わない。そのため一見質素な暮らしをしているように見えるが、それはもの以外の精神部分に重きを置いていることの表れである。バラの花咲くガーデニングにこだわり、アフタヌーンティーを満喫し、散歩や旅を好むなど、毎日を楽しんで暮らす人が多い。その独特な生活スタイルからか「イギリス人の国民性はわかりにくい」といわれることがある。伝統と歴史を重んじる保守的な面もあれば、前衛的で革新的なものも好む。他人に対しては、よそよそしいようで、一度打ち解けると、うって変わってフレンドリーになる。