政治・経済的に安定した国として知られるスイスには、小学・中学・高校の名門ボーディングスクール(全寮制の寄宿学校)が多数あり、世界中から留学生が集まっている。
小学・中学・高校への留学が人気
スイスでは、日本のように国レベルで教育制度が決められておらず、26ある州それぞれに任されている。ただし、小学校に当たる初等教育、中学校に当たる前期中等教育、高校に当たる後期中等教育から成り立っている点はどの州でも同じである。
スイスの義務教育は、初等教育と前期中等教育の9年間。義務教育を修了して、高等教育機関への進学を希望する人は、リセやギムナジウムと呼ばれる学校で勉強し、修了書をもらって、大学などに進学する。一方、職業訓練教育を受ける人も多い。スイスの職業教育は企業で仕事体験をするなど、実践的である点が特徴となっている。
スイスへの留学は、小学・中学・高校留学が多い。交換留学と私費留学があるが、交換留学を行っている団体が少ないため、実際には私費での留学がほとんどだ。スイスへの私費留学で人気なのが、インターナショナルスクールへの留学。スイスのインターナショナルスクールには歴史があり、世界的な名門校も多い。インターナショナルスクールの母体となる教育機関は、アメリカやイギリスなど、さまざまな国にある。日本人留学生の場合は、国際バカロレア資格を取得できるコースや、欧米の大学に進学するための国別コースなどで学ぶケースが多い。
名門ボーディングスクール
スイスではインターナショナルスクールの歴史が古く、世界的に見ても名門校が多い。インターナショナルスクールのほとんどは、寄宿舎制を採っていることから別名ボーディングスクール(寄宿制学校)とも呼ばれている。ボーディングスクールの中には、世界各国の王族や著名人の子息などが学んでいる学校や、30カ国以上の生徒が一堂に学んでいる学校もあり、国際的な雰囲気の中で学ぶことが
できる。
教育内容は、学校によって個性があるが、勉強だけでなく情緒教育にも力を入れ、世界に通用する社交性を身につけるような指導を行っているところが多い。近年では、欧米の大学への進学準備を指導するプログラムを開講している学校もある。スイスへ留学する日本人のほとんどは小学・中学・高校のボーディングスクールへ通っている。
大学進学が可能かどうかは早期に決定
スイスでは、義務教育修了後に進学する教育機関によってその後の進路が決まってしまう。義務教育を修了した生徒のおよそ半数は職業教育を行う学校へ進学し、修了後は専門学校へ進学するか就職している。大学進学希望者は、義務教育修了後に大学入学資格取得学校で必要単位を履修後、規定の試験を受けて大学入学資格を取得する必要がある。一部の州を除いて大学入試は行われないが、大学入学資格を取得していることが大学へ入学する条件となっている。早期から進路が決まってしまうため大学などの高等教育機関で学ぶ人は、限られているのが現状だ。
国際的な学位システムの導入
大学には連邦工科大学のほか、州立の総合大学や教育、経済・社会科学など各種専門大学がある。また、スイスには多くの私立のカレッジがあるが、これらの機関で履修した科目は学位として認められないものもあるので、留学の際は十分な確認が必要だ。
近年、ヨーロッパの統一的な大学圏構築のためのボローニャ・プロセスの一環として大学改革が進められ、ECTSという単位制度が導入された。学位課程は180単位を取得して修了する学士課程の後、90単位または120単位を取得して修了する修士課程、博士課程の3段階となった。博士課程は、修士課程を経てから進学することになる。
アメリカなど他国に母体を持つ私立大学では、英語で授業を行うプログラムも実施している。通常、これらの大学の教育内容や学位の認定は、スイス政府ではなく、その学校の母国で行われている。
参考資料 『 諸外国の学校教育 欧米編』文部科学省、日本学生支援機構資料