フランスは国家予算の多くを高等教育支援に充てている教育国家。ヨーロッパでも有数の留学生受け入れ国で、短期留学から長期留学、学術・研究、職業的技能を修得するための留学まで、幅広い選択肢が用意されている。
初等教育・中等教育
フランスの義務教育期間は、6歳から16歳まで。初等教育(école primaire)は、6歳からの5年間が基本である。(その児童の能力によって5歳や7歳でも入学できる場合もある)。また飛び級、落第の制度もある。中学教育(collège)は、4年間。その後、高校教育(lycée)における16歳(2年生修了時)で義務教育は修了だが、多くがさらに上のバカロレア(baccalauréat:中等教育および国立大学入学資格試験)を目指して、就学を続ける。
高等教育
総合大学(universités)の9割以上が国立。研究者の育成に力が注がれているほか、現代社会の需要に応えてテクノロジー分野などで卒業後すぐにプロとして活躍できる人材の育成にも貢献している。課程修了後には、政府公認のものから大学独自のものまで、多種多様な資格・学位を取得できる。
フランス独自のシステムである政治・経営学系、工学系のグランゼコール(grandes écoles)には国公立と私立のものがある。一般に、高校卒業後2年間の準備コースの後に厳しい選抜試験を経て入学するが、近年は高校卒業後すぐに受験できるコースや、Masterから入学できるコースも増えている。高レベルの技術者や経営者など、産業界を担う人材や、科学・技術、人文科学など各分野の専門家を養成し、国際的にも通用する学位や専門性の高い資格を取得することも可能。
そのほかに、美術、建築、ジャーナリズム、医療関連分野、映像、音楽、舞踊など多彩な分野において高度で専門的な職業教育を受けられる国公立及び私立の教育機関がある。希望者を多数受け入れる学校から、非常に厳しい選抜基準を設けている学校までさまざまである。
学位の認定は高等教育・研究・イノベーション省が行う
フランスの教育制度の大部分は、一部の例外を除き、高等教育・研究・イノベーション省の下に置かれている。教育機関が大学学位やエンジニア資格などの国家資格を交付するには、同省に従うことが義務づけられている。教育機関には、国立、私立、また商工会議所に属するものなどがある。
〈フランスの教育関連機関〉
・高等教育・研究・イノベーション省
(Ministère de l'Enseignement supérieur, de la Recherche et de l'Innovation)
https://www.enseignementsup-recherche.gouv.fr/
・大学学長協議会(France Universités)
https://franceuniversites.fr/
・グランゼコール協議会(Conférence des Grandes Écoles)
http://www.cge.asso.fr/
・国立評価委員会(Comité national d’évaluation)
http://www.cne-evaluation.fr/
・国立研究局(Agence Nationale de la Recherche)
https://anr.fr/
・Campus France - フランス政府留学局・日本支局
http://www.japon.campusfrance.org/
・フランス留学経験者グローバルネットワーク
https://www.francealumni.fr/ja/poste/japon/
LMD3-5-8システム
フランスでは、高等教育機関全体のシステムをヨーロッパ規模で統一化していこうという発想を基に、“LMD3-5-8システム”が導入されている。これは、高等教育機関の枠組みを、Licence、Master、Doctoratの3つの課程に共通化したものである。さらにヨーロッパ単位互換制度(ECTS=European Credit Transfer and Accumulation System)を導入することにより、単位や成績評価に共通基準を設定し、学生の学業履歴がヨーロッパ基準で評価される仕組みになっている。そのため、学生は、フランス国内はもとより、ヨーロッパの大学、教育機関の間で自由に行き来することができるようになった。学生の流動を活性化させるとともに、大学、研究機関に協力発展の促進に寄与するものであるといえる。
多種多様なプログラム展開
フランス高等教育の特徴は、その柔軟性に富んだシステムにあるといえる。多種多様な教育機関がさまざまな分野で教育プログラムを提供し、留学形態も短期留学から長期留学、学術・研究のための留学から実践的な職業的技能を修得するための留学まで、幅広い選択肢が用意されている。そして教育機関を結ぶネットワークが確立されているおかげで、学生が全く異なる種類の教育機関へ進路変更を望む場合でも、多くの選択肢の中から希望の教育を受けられるよう対応することができる。フランスは何世紀にもわたり高等教育の質を維持しながら、多様に変化する社会の要求にも迅速に対応すべく教育も多様化する方向で進展を続けている。フランス高等教育の多様性と専門性は、今や現代社会の需要に応えられる人材育成に大きく貢献している。
留学生の受け入れ態勢
留学希望者もまた学習履歴を生かし、目的に合った教育をフランスで受けることができる。入学資格、期間、教育法などは、教育機関により大きく異なるが、いずれの機関でも課程修了後には資格・学位の取得が可能だ。
フランスはヨーロッパでも有数の留学生受け入れ国である。外国人留学生の数は37万人にも及び、学生全体の10%近くを占める。近年、フランスの教育機関では、Campus Franceによる“Bienvenue en France”のラベル認証が設けられ、留学生活を円滑にスタートするためのウェルカムデスクなど、よりよい留学生活をサポートする態勢が整っている。
また、国による多額の補助金のおかげで、学生の経済的負担は大きく軽減されている。
英語でのコース
近年、英語で履修できるコースが増えており、特にマネジメント、工学系、化学系などの分野の修士課程では、英語のみで学位が取得できるコースも多く見られる。フランス語が必ずしも高度なレベルに達していなくても、フランス語を現地で身につけながらさらに他言語で授業を受けて専門的な知識を身につけることを可能にしている。
成績評価(取得学位や資格)/社会的評価
世界最古の大学のひとつが創立されて以降、その長い大学教育の歴史を誇るフランスは、現在に至るまで伝統的かつ高度な教育水準を保ち続けている。2021年、フランスは、世界学術ランキングにて米、英に次ぐ第3位に位置している。また、フィールズメダル受賞者数第2位やノーベル賞受賞者第4位といった数字からも、世界的に高い評価を受けていることがわかる。
〈フランスで取得できる主な学位・資格〉
・Doctorat(博士号)
・Master(修士号)
・Licence(学士号)
・グランゼコール学位(修士号と同等)
そのほか、大学独自の資格や、各種専門分野での資格が多数存在する。