NAFL22巻 よくある質問
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該当ページ | 質問 | 回答 |
p.11 | 「入学基準」についての質問です。 p.11 「選抜評価」の説明として、 入学基準との比較が第一目的で行われることは少ない。 とありますが、 「入学基準」とは何でしょうか? 日本の大学等では、 「入学資格」という概念はありますが、 「入学基準」という言葉はあまり聞いたことがないような気がします。 |
選抜的評価は、入学試験のように定員以上の受験者に対して、定員を絞りこむことを目的にした試験です。ですから、ある一定の能力があるかどうかによって入学許可が与えられるのではなく、成績高得点から順番に定員に応じて入学許可をあたえるものです。 「入学基準との比較が第一目的で行われることは少ない」という説明がありますが、ここでいう「入学基準」とは、「診断的評価」と比較した説明です。診断的評価の説明に「選抜的評価と違って、ある能力水準以上であるかどうかを測定目的にしている。」とあります。 ですから、「入学基準」とはある能力水準以上であるかどうかという一定の基準、とお考え下さい。 例えば、大学入学試験で共通試験(センター試験)を受けた段階で一定の水準に達していない受験生に、2次試験の受験資格を与えないという「足きり」の制度があります。ある一定水準に達しているかどうかで判断しているので、この場合は「診断的評価」になり、足きりにあった場合は「入学基準に達していない」と説明することができるでしょう。しかし、2次試験の場合は成績高得点から順番に入学許可をあたえるので、「選抜的評価」になります。 |
p.15、16 | テストの種類の見分け方を教えてください。 ①大学入試は、どういうタイプのテストになるのか ②日本語教育能力試験は、集団準拠型テストになるのか ③日本語能力試験は、集団準拠型型テストになるのか ④日本留学試験は、集団準拠型テストになるのか いろいろな角度からの見分け方がテキストに紹介されているので、あてはめ方について迷っています。 |
まず、集団基準準拠テストについてご説明します。 集団基準準拠テストは、ある集団における相対的な学力差の測定を目指したテストでNRT(norm-referenced test)とも呼ばれ、こちらと比較されるテストが、目標基準準拠テスト、CRT(criterion-referenced test)になります。こちらを対比して考える見分け方がわかりやすくなるのではと思います。 集団基準準拠テストとは、先ほど述べたように個人間の相対的な差を明らかにすることを主眼としたテストです。その際に測定の対象となるものの基準については明確にはせず、全員が同一の試験を受ける点に特徴があります。 一方、目標基準準拠テストの目的は、受験者が到達目標に対してどのような状態にあるか、 個人内の伸びを測定することを目的としており、目標領域毎の絶対的な到達点を明らかにします。ですから、コースの目標、到達目標がきめ細かく設定され、その中における評価基準も明確になっています。代表的な試験は、学校で行われる中間試験、期末試験で、テストによって個々の学生の到達度を測り、その結果は学習・指導方法の改善にも利用されます。 以上の視点でご質問の試験について考えてみます。 ① 大学入試は、どういうタイプのテストになるのか → 集団基準準拠テストになります。 p.16 14行目から17行目の記述はこちらにあたります。 ② 日本語教育能力試験は、集団準拠型テストになるのか → 集団基準準拠テストになります 理由は上記と同様です。 大まかな出題基準は提示されていますが、以下、JEESの日本語教育能力検定試験の出題範囲に関する記述の通り 以下引用 ===== 【出題範囲】 次の通りとする。主要項目のうち、「基礎項目」は優先的に出題される。 ただし、全範囲にわたって出題されるとは限らない。 ====== 絶対的なものではなく、かなり広範囲にわたっていますので、 レベルやコースによって明確となっている目標基準準拠テストの出題範囲とは内容が異なります。 ③ 日本語能力試験は、集団基準準拠型テストになるのか → 段階的なレベルの設定があるという点では、 目標基準準拠テストの考え方を取り入れているといえますが、各レベルごとにみると集団基準準拠テストの特徴に当てはまります。 つまり、どちらの特徴もあるといえます。ですから、どちらが正解かとは名言できませんが、どのような点を評価しているかによって集団基準準拠テストの特徴になるか目標基準準拠テストの特徴になるのか、解釈するのが良いかと思います。 ④ 日本留学試験は、集団準拠型テストになるのか → 集団基準準拠テストになります。 こちらはJLPTと異なりレベルによって異なる試験ではなく、全受験者同じ試験を受験しますので、集団基準準拠テストになります。 |
p.35 | タスク5 について、解説を読みましたが具体的にイメージできません。 具体的な「解答構成形式の場合の問題」とその「解答」の事例をあげて説明していただけませんか? |
このタスクは文字力テストで、解答構成形式で答える問題の採点上の問題を考えます。 まず、文字力テストについて考えてみましょう。 文字力テストとは、p.27にもありますが、日本語では主に漢字の「読み」「書き」を問う問題です。例えば、p.27の(10)の問題は選択形式ですが、これを解答構成形式にすると 問:[ ]の部分を漢字でかきなさい。 [ようじ]があって りょこうにいけません。 と選択肢から正答を選ぶのではなく、自ら解答を考えて書く問題になります。 上記は「書き」の問題ですが、「読み」ですと 問:[ ]の部分をひらがなで読み方を書きなさい。 田中さんは[新聞社]で仕事をしている。 などとなります。 いずれも「受験者が記述」し、これが解答構成形式の特徴ですが、実際に記述すると、「書き」の場合は、 ・文字が汚くて読みにくい ・形は間違っていないようだが、文字のバランスが悪い ・書いた文字が小さすぎて判別不能 等といった問題がよく出てきます。 いずれも手書きの場合の問題なので、こちらで記載することができませんが、初めて漢字を書く学習者にはよくある問題です。 また、「読み」の問題の場合は、解説にあるように「しんぶんしゃ」と読むことができても、「ん」の文字が書けない、「しゃ」など拗音の表記が間違っているなど、表記上の問題も出てきます。これらの点をp.87の解説で「表記力が乏しいために正確な力を判定できない可能性が高くなる」と述べております。 |
45 | 「クローズ・テスト(cloze test)」とありますが、closeの間違いでしょうか? | クローズ・テスト(またはクローズ法テスト)は、英語で “cloze procedure test”となります。clozeとは、空所補助法の、という意味です。 |
p.65‐66 | 「妥当性」「真正性」の違いが分かりません。 | テストの「真正性」とは、テストの内容がどれだけ現実の生活での言語使用場面を反映し対応しているかという性質の程度を表しています。ですから、テストの点数が高い受験者ほど、実際の生活でも問題なく言語を使用しているのであれば、そのテストは「真正性が高い」といえますし、テストの点数が高い受験者であっても、実際の生活ではよく話せない、コミュニケーションができないということであれば、そのテストは「真正性が低い」といえます。 テストの妥当性とは、簡単に言えば、テストで測ろうとしている受験者の言語能力が正しく点数に反映するかどうか、ということです。例えば、文法力テスト(文法能力を測るテスト)であるのに、その選択肢に難しい漢字が含まれていてそれが読めないと解答できないようなテストの場合は、「妥当性が低い」ということになります。 |
p.93 | 実力診断テスト(14)の解き方 この問題で、(10)の平均値は 点数の合計÷16人=64 と手元の筆算で計算できました。 しかし、標準偏差を計算するには、この号の76ページの公式にあてはめるため、(86-64)の二乗+(78ー54)の二乗・・・と16人分を足して、それを16で割り、さらに平方根を求めるという複雑な計算をするほかないのでしょうか? これにかかる筆算の時間はかなり長くなり、テスト全体の時間配分を考えるととてもやりきれないのでは、と心配になりました。 もし、もっと簡単に選択肢を選び出せる方法があれば、ベストなのに、と思ったりもしています。 |
分散は、平均点から一人一人の得点をひいた値を二乗したものを全部足して、母集団の数で割ったものです。標準偏差は「分散」の平方根を取ることで求められます。 ですから、このような計算方法で求めるしかありません。 ただし、ここで大切なことは計算するための知識ではありません。平方根の計算のしかたは、計算機を使う場合でしたら、√キーで求められますし、 実際現場では、Excelなどの計算ソフトなどが使われています。ですから、実際の試験でこのような問題がでることは考えにくいでしょう。(もしこのような計算問題が出た場合は、 テスト対策としては他の問題に時間を割くほうが得策です。)しかし、それぞれの数値が持つ意味はしっかりと理解しておく必要があります。「分散」は得点の散らばりを「度合い」として知るための数値、「標準偏差」はそれを得点として把握するために算出した(二乗したものを元に戻した)数値(点数)ということを押さえておいてください。 |