NAFL23巻 よくある質問 | ||
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p.34 | 第3節の7行目 「抽象性の高い語彙の導入には、細心の注払う払う必要があります」 この部分について具体的な説明をお願いします。 |
この第3節で述べられている内容は「視覚教材」についてで、7行目前後では、初級の語彙の意味や概念の理解させるために使用する「絵教材」の問題点について述べられています。そして絵教材で問題になるのは、抽象性の高い語彙です。 抽象性の高い語彙に対し、抽象性の高くない語彙とは、具体的な物や事柄を表す語彙で、たとえば「りんご」「本」「テレビ」などのような事物や「見る」「食べる」といった具体的な動作に関する語彙がそれに当たります。 一方、抽象性の高い語彙とは、例えば「経験」「証明」「効果」などといったその現象が一言で言い表せないような語彙や、「静かな」「寂しい」「残念な」などの形容詞も含まれるでしょう。これらの語彙を「絵教材」つまり、一枚の絵に表し学習者にその意味を誤解なく理解してもらう「絵」にすることを考えてみます。 「りんご」「本」「見る」など、具体的な事柄を表す語彙は、イラストに表しやすいのに対し、「効果」「寂しい」などは、どうやって一枚のイラストに書くのが適当か悩まれるのではないでしょうか。例えば「寂しい」という意味を表すために、泣いている人のイラストを描いたとします。その場合、学習者が「泣いている」という動作に注目しているとしたら、「泣く」という動作と「寂しい」という形容詞を混同している可能性も考えられます。その点を「細心の注意を払う必要がある」と本書では述べています。 |
p.66 | プロソディーの定義についておたずねします。 p.66には「アクセント、イントネーション、プロミネンス、リズムなど」と「プロソディー」について説明されています。 一方、ウィキペディアで「プロソディー」を見ると、「言語学における韻律(いんりつ)あるいはプロソディー(Prosody)とは、発話において現れる音声学的性質で、その言語の一般的な書記記録からは予測されないものすべてをいう。具体的には抑揚あるいは音調、強勢、音長、リズムなどを含むが、これらのうちで文脈によって異なりうるものを指すのであって、その言語で決まっているアクセント(高低アクセントあるいは強勢アクセント)、声調言語の声調、音長を弁別する言語における長母音・短母音の区別といった性質は含めない。」とあります。これによると、「アクセント」は含めない、と読めます。 アクセントは、プロソディーに含まれるのでしょうか、含まれないのでしょうか? |
まず、プロソディー(prosody)とは韻律論のことです。アクセントやイントネーション、プロミネンス、リズムなど韻文の調子の研究を指します。結論から申し上げますと、プロソディーを説明するときには、アクセントもプロソディーに含まれます。 ただ、ここでいうアクセントとは、意味を区別ことに関わる個別のアクセント体系を意味するものではなく、文章全体の流れに関わるアクセントのことを指します。この点が少し分かりにくいかもしれませんが、「韻律」の定義に関係しており、上記に書いたように韻律とは文全体の音楽的な調子のことで、アクセントだけでなく、イントネーションやリズムなどによるものです。 しかし、アクセントだけを個別に取り上げ言語別にみると、言語によってアクセント体系は異なります。例えば日本語は高低、英語は強弱でその意味を区別します。そのような言語によって個別に体系が異なる性質については、「プロソディーを定義する上では」アクセントはプロソディーに含まれません。この点をWikipediaでは「それらのうちで文脈によって異なりうるものを指すのであって、その言語で決まっているアクセント(高低アクセントあるいは強勢アクセント)、声調言語の声調、音長を弁別する言語における長母音・短母音の区別といった性質は含めない。」と述べています。 |
p.87 |
著作権の保護期間についてお尋ねします。 |
2018年12月30日に、保護期間を70年に延長する規定を含むTPP11協定(環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的協定)が発効されたことに基づき日本での著作権の保護期間は70年となりました。ただ、施行時点ですでに保護期間が消滅している著作権については著作権が復活することはありません。具体的にご説明しますと、 1966年12月31日までに亡くなった著者の場合は、旧法では2017年1月1日までに著作権が消滅しております。新法が施行されたのが2018年12月30日で、その時点で著作権が消滅していますので延長されません。 しかし、1968年以降に亡くなった著作者の場合、新法が施行された時点ではまだ50年経っておらず、著作権が消滅されていないので、著作権は2039年まで延長されることになります。 どちらが正解かというご質問ですが、これは現在は「70年」になりましたので、現時点における著作権の期間そのものについて問う問題であれば「70年」が正解ですが、 著作権の権利を持った著者(または団体など)が死亡(または消滅)した時点によって、 「50年」「70年」どちらも正解になる例もありますので、テストの文脈をよく読み解答するのがよろしいかと思います。 |
p.95 | 以下の「」内にある3つの言葉と、他のテキストに記載があった「語用論「非言語」とがあり、それぞれの相違点或いは相互の関係と、それぞれの具体例を知りたく、ご教示ください。 なお、下記はいずれも、文脈にも近く感じるので語用論と似ているように感じます。 『社会言語学でいう、場面や対人関係的要素である「言語外的要素」・・・、声の大小、抑揚、身ぶり、表情など、言語に付随する「副言語(パラ言語)」・・・、言語からは独立しているが言語行動に随伴する「言語外活動」(=他のテキストでいう非言語のことですか??)・・・』 |
まず、テキストp.95にある3つの用語について見ていきましょう。 ・言語外的(extralinguistic)な要素である場面や対人関係的要素 言語には、同じことを言うのに、さまざまに丁寧度の異なる表現があり、その表現は場面が改まった場面かくだけた場面かによって、それぞれ相応しい形が選ばれます。 その使い分けに影響を与えるのが「場面」や「対人関係」といった言語外的な要素であると考えられます。 (詳しくは、テキスト15 社会言語学「第2章 言語のバラエティー(その2)―場面によるバラエティ―」(p.21-27)をご参照ください。) ・副言語(para-language) 副言語はパラ言語とも呼ばれ、音声言語の分節的な要素(例えば、意味を弁別する発音やアクセントなど)を超えてコミュニケーションに関与する要素を指します。 例えば、(秘密であることを示す)ひそひそ声、(甘えるときの)鼻声などの要素が副言語として扱われることが多いです。 ・非言語的行動(non-verbal) 人がコミュニケーションに使っているのは言語だけでなく、言語によらない行動(=非言語的行動)(例:声(イントネーション・プロミネンス)・身振り・表情・服装など)もあります。それは言語と重ね合わせて、あるいは単独で重要なコミュニケーション手段となっています。具体的には次のような行動があります。 *特定の語句を身体動作で表現するもの。例えば、口の前に人差し指を立てる「静かに」、親指を上げた「いいね!」のようなもの。 *音声言語のメッセージと共に使われ、その内容を視覚的に保障・補強する身体動作。例えば、日本語(日本文化)では「ありがとうございます」という音声と共に、「頭を下げる」という動作(おじぎ)をすることなど。 特に上記の「副言語」と「非言語的行動」は、現実的に個々の言語と文化によってアクセントやイントネーション、身振りの形態と機能に大きな差異があるため、これら二つの要素の境界をはっきり決めることは難しいとされています。まずは、「語用論」で扱う「言語外的」要素との違いを整理されると、よいでしょう。 |
p.151 | 実力診断テスト[4] [4]「インタラクションが透明になる」とはどんな状態のことですかという問題なのですが、透明になるということはその道具を意識しない状態で合っていますでしょうか? |
はい、「インタラクションが透明になる」とは「その道具を意識しない状態」で合っています。 第1章5節「透明なメディア」にもこの点の説明がありますので(p.16 2-3行目)、こちらも合わせてご参照ください。 |