NAFL7巻 よくある質問
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該当ページ | 質問 | 回答 |
音声全体についての質問 | 音声を聴いてアクセントの誤りを見つける課題に対し、どこが「滝」なのか聞くたびに自分の思う場所が、変化し迷ってしまいます。判断方法、訓練方法をご教示頂けないでしょうか。よろしくお願いいたします。 | 音声については、「難しい」「どのように勉強したらいいか分からない」という声がよく聞かれます。 特にアクセントの問題は、ご自身では標準アクセントで発音できていても、 アクセントが聞き取れなかったり、アクセント記号を見てもわからない方も多くいらっしゃいます。 その原因の一つは、おそらく今まで日本語の音を「意識して」聞いたことが あまりなかったからだと思われます。 さらにアクセントについては、あまり意味のない50音の並びであったり、 一般的な単語でも日本語として不自然なアクセントや音を聞き取らなければならないなど、 今まで聞いたことがなかった「音」を聞き取らなければならないので、 迷ったり難しく感じるのはもっともです。 しかし日本語教師としては、学習者が思いもよらぬ発音をしたときに、 音声上の特徴を聞き取り「なぜどこが違うのか」という点を分析的に観察することが必要です。 そのために、「意識して音声を聞く」という練習が必要なのです。 ニュースなどを意識的に聞くことも訓練の一つにはなりますが、 何も意識せずに聞くだけではやはり難しいので、 まず日本語のアクセントについて整理し、「聞くポイント」を確認しておきましょう。 日本語の場合は、音の高さの差がアクセントになるので、音の高低だけに注目していく方が分かりやすくなります。 アクセント核(滝)を境に音が下がりますので、「強いところ」ではなく、 「下がったところ」を探すように聞いてみてください。 日本語(標準語)のアクセントに関する基本的な規則には、 ①基本的に、下がったらそのあと再度上がらない。 ②第1拍にアクセントの下がり目がない場合、2拍目は高い音である。 という大きな規則があります。 たとえば、「おかやま」は、LHLLです。(L:low/低い、H:high/高い) 「ひろしま」は、LHHHです。一方、「かがわ」はHLLです。 このように、一度HLと下がった場合、LHLHやHLHなどになることは、 強調を最終拍におかない限り、起こりません。また、LLHHなどになることはありません。 これは、言い換えると、一拍目が高いかどうか聞き分けられれば、 自然とアクセントの型の選択肢が絞られるということです。 したがって、「どこからあがっているか」は、知識としてひとまず学習し、 1拍目が高く2拍目が下がっている場合と1拍目が低く2拍目から高い場合とを聞き比べましょう。 地道な練習ではありますが、この繰り返しが自分なりの聞き取りの基準を精査することになります。 何度か練習をしたら、誤った日本語の発音である、 一度下がって上がるパターンの音声を聞いて、どこで再び上がっているか考えてみてください。 きっと、前より聴きやすくなっているはずです。 次に、練習問題を使って聞く勉強法を紹介します。 その際にはNAFLの練習問題や、検定試験の過去問題など解答や解説がある問題を活用してみてください。 練習問題には試験問題には必ず解答がありますね。 その解答には「聞くべきポイント」が必ず示されており、 必ず違いが分かるように問題が作られています。 解答を見ながら音声を繰り返し聞き、「聞くべきポイント」を何度も確認するようにすると、 少しずつポイントが掴めるようになります。 ご質問に「どこが「滝」なのか聞くたびに自分の思う場所が、変化し迷ってしまいます」 とありますが、慣れないうちは迷うことも当然です。 ですから、一度だけでなく、違いが分かるまで「繰り返し聞く」ことが大切です。 引き続き頑張ってください。 |
音声全体についての質問 | 日本語で有声・歯茎・摩擦音の「ザ・ズ・ゼ・ゾ」を使うべき語と、有声・歯茎・破擦音の「ザ・ズ・ゼ・ゾ」を使うべき語は、どうやったら見分けられるのかわからず、悩んでいます。同じように、有声・歯茎硬口蓋・摩擦音の「ジャ・ジ・ジュ・ジェ・ジョ」と、有声・歯茎硬口蓋・破擦音の「ジャ・ジ・ジュ・ジェ・ジョ」についても使い分け方がわかりません。ルールがあるのなら、ぜひ教えてください。 | 有声・歯茎・破擦音の「ザ・ズ・ゼ・ゾ」 有声・歯茎・摩擦音の「ザ・ズ・ゼ・ゾ」 の使い分けについてですが、 p.62で述べている通り以下がポイントとなります。 「母音に挟まれた場合は摩擦音」 (例: かず、構図(こうず)、アジア等) 「母音間以外では破擦音。撥音の後、促音の音も破擦音。」 (例: 図表、時間、あんず、グッズ等) これは拗音「ジャ・ジ・ジュ・ジェ・ジョ」でも同様です。 このような傾向になるのは、調音法と関係しています。 まず、「摩擦音」と「破擦音」か、 という発生の方法に注目してみましょう。 まず、破裂音は、呼気を唇や舌やでいったんせき止めて発音する音です。 一方、摩擦音は、呼気の通る道を唇や舌で狭めて音を作ります。 破裂音や破擦音と違って、呼気をせき止めることはありません そして「破擦音」とは、「破裂」「摩擦」と2段階の調音法で音を作り、 一度呼気をせき止めてから、摩擦させる音になります。 実際の音を比べてみると摩擦音と破擦音も、摩擦をさせているので、 両方ともスーという息が漏れる音があります。その息の漏れ自体は同じ音です。 しかし、違いは息の漏れの前に口の中で一度音が止まるか止まらないかです。 音が一度止まる音=いったん呼気をせき止めて破裂させて「破擦音」となるのです。 先ほど「母音に挟まれた場合は摩擦音」になると申し上げましたが、 母音は息の流れを妨げず、舌の高さと前後の位置、唇の丸めによって 発音する音ですので(p.69参照)、通常唇を閉じずに発音します。 ですから、母音に挟まれた場合は「唇を閉じないまま」つまり、 呼気をせき止めずに発音するので「摩擦音」となるのです。 こちらの音の違いについては、p.63にある語彙をご自身で発音してみたり、 違いを何度も聞くことで実感して理解することができるかと思います。 音声の問題は、知識の理解+実感で理解が深まります。 あわせてご確認してみてください。 |
音声全体についての質問 | 音声学の教材は、そのページ、そのページは理解して読み進めているつもりですが、 テストではわからなくなり、合格点が取れません。締め切りが迫っているので、 よい勉強法を教えていただけませんか? |
外国語と違って日本語をこのように意識してじっくりと聞く機会もあまりないので、 最初は難しいかもしれません。 ですから、音声については、「難しい」「どのように勉強したらいいか分からない」 という声がよく聞かれます。 用語の難しさに加えて、テキストとCDでは実際の発音や 口腔内の形が分かりにくいと感じることがあるからかもしれません。 音声の勉強法のひとつは、とにかく、自分で体験することです。 自分で発音し、聞き取り、苦手な問題は発音しながら繰り返しやってみることです。 地道なようですがこれが一番勉強になり、分かってくると面白くなるものです。 では、具体的な学習法をご紹介したいと思います。 まずは自分で発音してみましょう。 自分で発音できない音やアクセントを聞き取ることはできません。 アクセントの問題の場合は、思い切り、オーバーなくらいに高低差をつけて、 ゆっくり、はっきり発音してみてください。 特にミニマル・ペア(ミニマルペア例:橋と箸、雨と飴)で練習するとわかりやすいでしょう。 ここでアクセントの高低をしっかり意識してください。 最初は2文字の単語からはじめ、文字数を多くしていくといいでしょう。 次に、子音の発音の調音法と調音点の覚え方ですが、知識として覚えるのではなく、 こちらも実際の発音と一致させて「身体で覚える」のがもっとも効率がいいですし、 試験対策になると思います。(発音記号、音声記号は完全に知識となるので、また別の問題ですが) 何故かというと、既に日本語の発音が完璧な状態で身に付いているからです。 ですから、自分で意識して発音し、聞き取り、 苦手な問題は、「国際音声記号表」や解答をみながら、 発音しながら繰り返しやってみることです。 「国際音声記号表」は、一見とっつきにくいのですが、 日本語の五十音が「国際音声記号表」のどの発音記号に当たるのか、 発音しながら自分の舌の位置、口の形などを確認してやってみてください。 7巻p.103の「超拡大五十音図」が、外来語も含めた日本語の音が記載されておりますので、 参考になるかと思います。 横の並びが調音点、縦の並びが調音法を表しているという意味を 体で理解できるまでやってみてください。 体で理解することで、 だいたいの発音記号やその調音法、調音点を覚えることができるかと思います。 このようにすると用語の意味と発音を一致させることができ、 難解に思えた口腔内の図や音声記号が生きた知識となり、現場でも役に立つことと思います。 最初は時間がかかるかもしれませんが、慣れてくると発音した時に 「舌がここに触れた(摩擦音の時は「触れそう」ですが)から、これは歯茎音だな」とか、 「一回舌が空気を止めてパッとなったから、破裂音だ」といったように、 「身体で再現→それを言語化する」ということができるようになると思います。 母音の場合は、 ・舌の高さ ・舌の位置(前後) ・円唇性(唇がまるめられるかそうでないか) から分類されますので、この3点を大げさに動かしながら発音してみてください。 最後に、練習問題を使って聞く勉強法を紹介します。 例えば、アクセントの問題は、ご自身では標準アクセントで発音できていても、 アクセントが聞き取れなかったり、アクセント記号を見てもわからない方も多くいらっしゃいます。 その原因の一つは、おそらく今まで日本語の音を「意識して」聞いたことが あまりなかったからだと思われます。 特に音声の問題は、あまり意味のない50音の並びであったり、 一般的な単語でも日本語として不自然なアクセントや音を聞き取らなければならない等、 今まで聞いたことがなかった「音」を短時間で聞き取らなければならないので 慣れないと難しく感じるのはもっともです。 しかし日本語教師としては、学習者が思いもよらぬ発音をしたときに、 音声上の特徴を聞き取り「なぜどこが違うのか」という点を分析的に観察することが必要です。 この「意識して音声を聞く」という練習をするために、実力診断テストにある練習問題や、 検定試験の過去問題などを活用してください。練習問題には試験問題には必ず解答がありますね。 その解答には「聞くべきポイント」が必ず示されており、 必ず違いが分かるように問題が作られています。 解答を見ながら音声を繰り返し聞き、「聞くべきポイント」を何度も確認するようにすると、 少しずつポイントが掴めるようになります。 一度だけでなく、違いが分かるまで「繰り返し聞く」ことが大切です。 完全にわかるようになるまでというのはすぐには難しいかもしれませんが、 繰り返し練習することで教師力も養えると思いますので、引き続き頑張ってください。 |
p.21 | 第2章:ポイントチェック 1 図書館で本を読みました。 正答は、「本を」の発音の誤りは、撥音が[n]になっているという問題がある となっていますが、 何度CDを聴いても 図書館で本「の」読みました と言っているように聴こえます…… |
「図書館で本「の」読みました」と聴こえるとのことですが、
まさにそのように聞こえる発音にとなっているのが問題のポイントです。 これは撥音「ん」の発音上の問題ですが、 撥音とは「後続音と同じ調音点の鼻音を一拍分引き伸ばすことで生じる拍」 であるため、後続音によって撥音には様々な異音があります(テキストp.92に詳しく載っております)。 歯茎音の前で[n]歯茎・鼻音 両唇音の前で[m]両唇・鼻音 休止の前で[N]口蓋垂・鼻音 などです。 「本を」という発音では後続音が「を[o]」という母音となるため、 その直前の撥音は「鼻母音」で発音しなければなりません。 しかしこの学習者は、母音の前にも関わらず、歯茎音の[n]で 発音してしまっているので、[n]と直後の[o]がくっついて[no]となり、「ホノ」と発音してしまっています。こちらについては、p.93にも述べられていますので、ご参考になさってください。 |
p.24-28 | アクセントの型がよく理解できません。 アクセントの核もどれだか見分けがつきません。 CD-4-32でポイントチェックをして何回も聞きましたが聞き分けができないです。どうすればいいでしょうか。 |
まず「中」については、接尾語である「中」はアスペクトを表します。 また、「中」は漢語の動作名詞(動作を表す名詞)に付きます。 つまり ・今~ている、というアスペクトの意味を表す ・漢語の動作名詞につく という2点で正規の用法であるかどうかを判断します。 ですから、選択肢e「故障中」の「故障」は動作ではなく、 状態ですから、正規の用例とはいえない、ということになります。 もう1つのc「考え中」ですが、 これに関しても「考え」は漢語ではありませんから、 正規の用例とはいえない、ということになります。 ただ、「考え中」という言い方もありますが、 ×「食べ中」×「読み中」などと言えないように、 動詞の連用形が「~中」と結びつくことはできません。 ですから、「考え中」については、文法の形式上「正規の用法」とは 言えないということになります。 |
p.33-45 | 「イントネーション」と「プロミネンス」の違いを教えてください。 |
イントネーションは文全体に高低の音程をつけて、発話のニュアンスや文法などを表す機能のことです。アクセントが語単位の高低であるのに対して、イントネーションは文単位になります。広義では発話全体につけられた抑揚のことをいいますが、狭義では文末の抑揚のことをいいます。
プロミネンスは発話の中で、ある部分を際立たせて発音することをいいます。何かを対比させるときに用いることが多く、例えば「明日は田中さんは来ない」(下線の部分が際立たせたところ。「田中さんは来ないが、他の誰かは来る」という意味で)や、「明日は田中さんは来ない」(「明日は来ないけど、他の日は来る」という意味で)などです。際立たせる部分は、強く発音されたり、逆にささやきにしたりして、強調します。 |
p.45 | 1、これでいいでしょうか についてですが、 答えは、イントネーションが(平)調となるべきところが、(上昇)調となっているという問題がある となっていますが、「これでいいでしょうか?」 と質問しているので、上昇調が正しいのではないでしょうか? |
疑問を表す終助詞「か」があるため、上昇調で発音すると お考えからのご質問かと思われます。 しかし、終助詞「か」がつくものが全て「質問」というわけではありません。 また、同じ形式の文でもイントネーションによって意味が変わるなど、文法と音声の関係は複雑です。 「これでいいでしょうか。」は質問というよりは確認の意味となります。 「でしょうか」には「確認」という機能があります。 「これでいいでしょうか。」を上昇調で発音してしまうと疑問の意味が強くなりすぎて 相手に対して批難しているような印象を与えてしまいます。 ほかにも「私がしましょうか。」という申し出も平調で言うことができますね。 「私がしましょうか。」は上昇調でも平調でも言うことが可能ですが、 疑問や確信の度合いなど微妙にニュアンスが違うでしょう。 音声の指導上の注意にもなりますが、学習者には 発音上の問題で相手に失礼な印象にならないようにすることを意識させることも 必要です。そのためこちらでは上昇調を発音上の誤りとしています。 |
p.47 | ア段の例でいえば、ガザダバナマヤラワと母音のアは有声音であり、カサタパハは無声音であるとのことですが、少し疑問が湧きました。カサタバハは有声でも無声でも、すなわち声帯振動を伴っても伴わなくても発音できると思います。いかがでしょうか。 | この箇所で述べられているのは、 下から8行目の「子音で言えば」という点がポイントです。 日本語は子音と母音の組み合わせでできており、 母音は有声音なので、50音の音になった時点では(簡単に言うと) すべて声帯振動を伴います。 しかし、「ガザダバ」と「カサタパハ」の違いは、 前者は有声子音と母音の組み合わせ、後者は無声子音と母音の組み合わせ という違いになります。 例えば、「ガ」と「カ」の違いは、 子音が[g]という有声子音なのか[k]という無声子音なのかという違いです。 ご質問で「声帯振動を伴っても伴わなくても発音できる」とありますが、 実際に発音するときには、 びっくりした時、静かに話すとき、怒って話す時、 笑いながら話す時など、様々な条件があるので、 実際の発音される音はご質問のようにどちらもあるかと思います。 しかし、それらは意味の区別に関わりのない「音声」であり、 意味の区別に関わる「音韻」ではありません。 p.47で述べられてる内容は「音韻レベル」であることを踏まえ、 再度内容を確認するとよいでしょう。 |
p.48 | 「音声」と「音韻」の違いを教えてください。 |
まず、音声から説明したいと思います。音声というのは私たちが発する音で、コミュニケーションのために音声器官を使って作られたものを指します(例えば、くしゃみや拍手などは除かれます)。ですから「音声上」というときは、その音声をあるがままにできるだけ正確に表そうとします。しかし、厳密に言えば、私たちが発する音声は発するたびに多少の違いがあります。すべてを記号化するには無理があるので、国際音声記号というものが作られています。これは人が作る音をできるだけ細かく正確に表そうとしたものですから、どの国の言葉についてもこの記号が指す音は同じです。
それに対して音韻というのは、ある言語の中で意味を区別するための最小単位を抽象化したものです。テキストの例にあるように、私たちが日本語でラ行の言葉を話すとき、[l]と[r]の区別は意味の違いに影響がありません。ちょっとぎこちない感じはしますが、「そら」の「ら」を[l]と[r]で発音してみてください。どちらの発音をしても「空」を思い浮かべると思います。つまり、正確な機械などに通せば、[l]と[r]という異なる音として区別されるものが、日本語という言語では/ラ/という一つの音素としてまとめられ、音韻上では一つにくくられます。もう一つ、/ン/という音を考えてみましょう。駅のホームにあるローマ字表記の駅名を思い出してください。新宿はshinjuku、新橋はshimbashiとなっているかと思います。同じ「ん」の音ですが、唇が閉じない[n]と閉じる[m]の違いが実はあります。つまり、音声上では二つの異なる音ですが、日本語としてはどちらも同じ音素で表されます。でも、これは他の言語では意味を区別する重要な違いになってしまいます。ですから、音韻というのはそれぞれ言葉によって異なります。 ですから、私たち日本人が英語を勉強するときに苦労する[l]と[r]は、日本語の音韻では一つの/ラ/という音であるのに、英語の音韻では意味の差が出てしまうから難しいのです。日本語では意識しなくてもよかった音声上の違いを、英語では意識しなくてはいけないのです。それと同じことが中国語や韓国語話者の[p]と[b]、[g]と[k]などにも起こるのです。 |
p.52 | 5-6 韓国語における/m/ 8行目 【しかし、前の節で見たように、/b/に当たる「平音」は、語頭では「p」で実現されやすいので………のような形で対立しています。】 と、韓国語を勉強したのでここまでは理解できるのですが、 次の 【このとき、異音として、多少の破裂を含んだ[mb]のような音があった場合韓国語話者はこの有声音お手がかりに、[p] の一種ではなく[m]の一種に引き寄せて聞くのです。[m]は有声音です。】 この部分がどうしても分かりません。多少の破裂を含んだ[mb]のような音とは具体的にどういうことでしょうか? また、この誤用は語頭だけに現れるとなっていますが、以前、韓国人の友人がサンマと言おうとして、サンバと聞き間違えられたことがありました。語尾にも出ることはあるのでしょうか? |
まず、多少の破裂を含んだ[mb]のような音とは具体的にどういうことか、
というご質問についてですが、たとえば/バイ/という音で考えてみましょう。 はっきり/バ/と破裂音で発音できていれば、 韓国語話者にとっては、[b]として認識されず、 [m]と[p]の対立で/パイ/という単語だと認識することになりますね。 しかし、発音する前に鼻にかかったり力がこもったりなどの何かのきっかけで /ンバイ/[mbai]のように発音したとしましょう。 すると[b]が有声両唇音という点で[m]と共通しているため、 /マイ/として認識してしまう、つまり[m]の異音として[m]に引き寄せて聞いてしまう可能性があるということになります。 これは、今のべたように[m]と[b]が無気・有声両唇音という点で共通していることと [b]という子音が韓国語において他と弁別できる音韻として認識されていないことに その理由があると考えられます。 私たち日本語母語話者にとっては、マ行とバ行は音韻として異なっていると認識しているため 大きく異なっているように感じられますが、韓国語話者にとっては[b]は音韻として認識していないため、たとえ/ムリ/というべき時に/ブリ/に近い発音を出してしまっても 「あ、あまり鼻にかかってないけど、きっと/ムリ/だろう」と思い、/ムリ/と/ブリ/の違いに対してそれほどまでに注意を払うことなく、混同してしまっている可能性が考えられます。 ご質問にある「サンマ」と「サンバ」についても、語頭ではありませんが、/マ/と/バ/の前に撥音/ン/がありますね。撥音は後続音の調音点の鼻音を一拍分引き伸ばすことで生じる音です。/マ/と/バ/も両唇音で、前の撥音は[m]と鼻音になり、「サンバ」の/バ/は、「多少の破裂を含んだ[mb]」になります。 ですから、上記で説明したような混乱があるのではと考えます。 |
p.60 | 〈タスク22〉問1についてa 歯茎・破裂(破擦音) b 歯茎硬口蓋・破擦音となっているのですが、破裂(破擦音)と単なる破擦音の違いを教えて下さい。 | 破裂音も破裂音も呼気を唇や舌やでいったんせき止めて発音する音ですが、 破裂音がせき止めた部分をパっと開放して呼気を吐き出すのに対し、 破擦音は、「破裂」の後、一度摩擦音に移行してから開放します。 口腔断面図は調音の最初の一瞬を切り取った図なので、破裂音も破擦音も調音点を舌でせき止めて 閉鎖をした状態となり、見た目で区別はできないことも覚えておきましょう。 |
p.62 | 表5.ザズゼゾ、ジャジジュジョが二種類有りますが、日本語を表すと[z][dz]でしょうか?区別・使い分けがわからないのですが…。聞き分けについてもわかりにくいのですが…。 |
ザズゼゾ、ジャジジュジョは、有声‐摩擦音と有声‐破擦音の二種類で表記されていて紛らわしいかと思います。
ここでまず注目するのは、これら二種類のザズゼゾ、ジャジジュジョは「前後の音環境により、摩擦音・破擦音どちらが表れやすいかが、ある程度決まっている」(p.63)という点です。具体的には前後の音環境により、一般的に次のような傾向があります。 ・母音間以外では破擦音[dz]になる。(例:図表、時間、あんず、漢字、グッズ、エッジ) ・母音に挟まれた場合は摩擦音[z]になる。(例:かず、構図、きじ、アジア) 厳密には/ジ/の音声記号は他と異なります。テキストp.64「表6 子音表(3)」をご確認下さい 。 例えば「図表」/ズヒョウ/と「構図」/コウズ/で考えてみましょう。まず「図表」の/ズ/は母音に挟まれていないため破擦音[dz]で発音されやすいです。次に「構図」の/ズ/は、前が長音/ウ/があり母音に挟まれた場合となり摩擦音[z]で発音されやすいです。ご質問のうち「区別・使い分け」に対しては、上記の前後の音環境による摩擦音・破擦音の表れやすさの傾向を再確認されることが重要であると考えられます。 そして、「聞き分け」に関してはCD5-9の内容で考えていきましょう。 まず、一行目の「図表」「時間」「あんず」「漢字」「グッズ」「エッジ」は一般的に破擦音で発音されやすいです。それらの語を摩擦音で発音すると「語頭が緩んでいるような感じ」で聞こえるでしょうか。次に、二行目の「かず」「構図」「きじ」「アジア」は一般的に摩擦音で発音されやすいです。それらの語を破擦音で発音すると「語中でひっかかるような感じ」で聞こえるでしょうか。ただし、これらの「語頭が緩んでいるような感じ」「語中でひっかかるような感じ」といった感じ方/発音の仕方には個人差があり、不自然に感じない/聞こえない場合もあるでしょう。しかし、学習者の発音を聞き「話せているけど何か日本語らしく聞こえない」といった場合、その原因の一つとして、日本語のザ行の発音には上記のような傾向があることを知っておくことで、効果的な指導ができると考えられます。そのような観点から、今回のザ行の発音に限らず、日本語の発音を学習していかれることをお勧めいたします。 |
p.66 | 第5章 ポイントチェック 1番 本当はぜったいお怒りなんでしょうね ぜったいの「ぜ」が「じぇ」と聞こえます… 解答はcとなるべきところがdとなっている、となっていますが cは、歯茎・破裂音(破擦音)、dは、歯茎硬口蓋・破擦音ですよね? 歯茎・破裂音(破擦音)は、タ ティ トゥ テ ト テュ/ツァ ツィ ツ ツェ ツォを調音する状態で、歯茎硬口蓋・破擦音は チャ チ チュ チェ チョを調音する状態ではないのでしょうか? |
1番「本当はぜったいお怒りなんでしょうね。」 という文では、下線部の「ぜ」が/ジェ/のように言っていますので、 /ゼ/[dze]歯茎破擦音のcになるべきが、 舌のあたる位置が口蓋化(後方にずれている)しているd(歯茎硬口蓋破擦音)となります。 ご質問に、 「歯茎・破裂音(破擦音)は、タ ティ トゥ テ ト テュ/ツァ ツィ ツ ツェ ツォ を調音する状態で、 歯茎硬口蓋・破擦音は チャ チ チュ チェ チョを調音する状態ではないのでしょうか」 とありますが、 ご指摘の通りですが、「無声」か「有声」という対立でみると以下のようになります。 無声・歯茎・破擦音:ツァ ツィ ツ ツェ ツォ 有声・歯茎・破擦音:ザ ズィ ズ ゼ ゾ 無声・歯茎・破裂音:タ ティ トゥ・テュ テ ト 有声・歯茎・破裂音:ダ ディ ドゥ・デゥ デ ド 無声・歯茎硬口蓋・破擦音:チャ チ チュ チェ チョ 有声・歯茎硬口蓋・破擦音:ジャ ジ ジュ ジェ ジョ |
p.66-67 | ポイントチェックの口腔断面図について 図の調音点、調音法は下記のものでよいでしょうか。お教えください。 67ページ 例1~2 a 歯茎硬口蓋摩擦音 b 軟口蓋摩擦音 c 歯茎破裂(擦)音 ※歯摩擦音との違いがよくわからないので教えてください。 d 歯茎硬口蓋破擦音 68ページ 3~5 a 歯茎破裂(擦)音 b 歯茎硬口蓋摩擦音 6 a 歯茎鼻音 b 歯茎? c 両唇鼻音 d 両唇破裂音 c 歯茎硬口蓋破擦音 d 歯茎摩擦音 |
図の調音点、調音法について、そのご理解で問題ありません。 67ページ 例1~2 a 歯茎硬口蓋摩擦音 b 軟口蓋摩擦音 c 歯茎破裂(擦)音 d 歯茎硬口蓋破擦音 68ページ 3~5 a 歯茎破裂(擦)音 b 歯茎硬口蓋摩擦音 c 歯茎硬口蓋破擦音 d 歯茎摩擦音 6 a 歯茎鼻音 b 歯茎破裂(擦)音 c 両唇鼻音 d 両唇破裂音 歯茎破列(擦)音と歯・摩擦音との違いについてですが、 歯・摩擦音の口腔断面図は、p.65にある表が分かりやすいでしょう。 英語のth の発音で、軽く舌先をかんで発音します。 この「軽く」がポイントでp.65図21のように、舌が軽く歯に触れています。 しかし、破裂音ではないので空気を少し通すような音が残り、 口も完全に閉じてはいません。 この「完全に口を閉じていない」という部分が 図にすると非常に微妙で分かりにくいかもしれませんが、 「空気を少し通すような音」が残るかどうかを「音」でも確認するのが良いでしょう。 また、歯・摩擦音は日本語にはない音です。P.64-65の解説と共に、 CD5 11をもう一度聞いてみると理解も深まるかと思います。 |
p.69 | タスク24 ヘマとヒマの 違いは ヘは調音点が声門 ヒは調音点が硬口蓋 の違いかと思ったのですが、なぜ 開口度の違いなのでしょうか? ネとニも同様に調音点の違いかと思いました。 コとクは調音点も調音法も同じなので舌の高さの違いだと分かるのですが。 |
まず、結論から言いますと、「調音点が違う」でも、間違いではありません。 しかし、6-1は「母音の分類基準」についての記述であり、タスク24は68ページから69ページまでつながったタスクで、根底には「学習者が何かを言おうとして、何かを間違えたために違う音になった」という前提があります。そのため、問題でも単純な発音記号の比較ではなく/ /でカナが括られており、学習者発音を異音に含めた、ゆるい音韻表記となっています。以上の点を踏まえて発音を聞き、学習者が何を間違えたのかという最も目立つ特徴に着目すると、最も異なるのは母音の開口度となります。 そのような点に着目して、教育実践を念頭において問題を解くことを重視していただけたらと思います。
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p.78 | 母音の無声化についておたずねします。 菊(きく)は、「き」のイが無声子音kにはさまれており、無声化すると思います。 それでは「く」のウは、この単語だけを発音する場合、あとが休止になっているとみなして 「です。」の「ス」のように無声化するのでしょうか? |
「きく」の無声化についてのご質問ですが、 ご質問の通り「き」も「く」も無声化します。 「菊」ではなく、文末に表れやすい形の「聞く」で比べてみましょう。 例1)社長の話を聞く。 例2)社長の話を聞く時、社員は立っていた。 例1の「聞く」と例2の「聞く」の「く」を比べてみると、 例2の「く」のほうがよりはっきりと「く」を発音しているのではないでしょうか。 音声について用語を(ここでは無声化)個々の現象から 考えながら学習されていること、とても良い勉強法だと思います。 音声、音韻論は、実際の音声を取り上げてその現象について 分析、研究していますので、 個々の現象をご自身の発音とも照らし合わせながら、 勉強されるとより理解が深まるかと思います。 |
p.80 | 口蓋化したときの調音点がズレる/ズレないの視点での口腔断面図のことで質問させてください。 79ページに、「イ段の子音はすべて口蓋化する」とあります。 パ、バ、マ行のイ段であれば感覚的にも口内がさほど変わらないので同じ調音点である一方、サ、ザ、タ、ダ、ナ行のイ段は明らかに調音点がズレる感じなので子音も変わっているのは理解できます。 問題は、カ行のキ、ガ行のギです。 特にキ(kj)は体感的にも硬口蓋に口蓋化していますし、80ページの図にある通り、カとキの口腔断面図を分けて書かれており、子音がkからkjと変わっていますので、口腔断面図上でも分けて理解するのが妥当と思うものの、巻末にある口腔断面図においてカ行は一括りで軟口蓋音となっています。 仮に試験で、キ、ギの子音を、口腔断面図や調音点で選択しなさいといった問題が出てきた場合、どちらで答えればいいのでしょうか? |
テキストでは日本語の発音におけるイ段の子音硬口蓋化についてかなり詳しく述べていますが、
80ページにも書いてある通り、カ行ガ行は「硬口蓋化が起きても主要調音点は変わらない」ものになります。 従って、検定試験を含め、基本的にはキ/ギは音声記号では[ki][gi]と簡略表記で表され、発音区分でも「軟口蓋音」とされるのが普通です。 しかし、実際はもちろんカ/ガとキ/ギの調音点は完全一致しているわけではなく、キ/ギは少しだけ硬口蓋に調音点がずれています。(81ページの最後の3行にも「このテキストでは/キ/を軟口蓋音、……その十代は、/キ/は軟口蓋~硬口蓋、……取り払っておきます。」と書かれています) なので、一先ずは「/キ/の調音点は?」と聞かれたら、「軟口蓋」と答えるようにして、頭の中で「でもイ段だから本当はちょっと硬口蓋寄り」と忘れないようにすればいいでしょう。音声記号の表記に関しても、「/キ/の発音記号は?」と聞かれたら[ki]と答えて、頭の中で「本当は硬口蓋化しているから、精密表記なら[k]の右肩に補助記号の小さいjがついてる」と忘れないようにすればOKです。 そして心配されている「キ、ギの子音を、口腔断面図や調音点で選択しなさいという問題が出た」場合ですが、普通は図38の「軟口蓋音」の図が提示されるはずです。ただ、出題者がわざと「硬口蓋化のことが分かっているかな?」と意地悪をして図39を提示してくる可能性は捨てきれません。 ただ、選択肢に80ぺージの図38と図39が同時に出てくるようなことは、考えられません。もし起こったとしたら、それは不成立問題となるはずですが、万が一図38と図39が同時に出てきた場合は、正しい図は39になります。 |
p.92、96 | 撥音[N] 休止の前で口蓋垂「N]の「休止の前で」とは何ですか? 例の本「ほん」などのように単語の最後が「ん」で終わるという意味ではないのですか? 第6章のポイントチェック5番は「ピカちゃん」と「ん」で終わっていますが、選択肢の図には口蓋垂音の図はありません。 |
「本」のように言い切る場合は口蓋垂音となるのですが、 これはあくまでも単語を言い切った場合です。 ですから、「ピカちゃん。」と単語を言いきった形ですと、ご質問のとおり[N]となります。 しかし、この問題は「ぴかちゃんと」と「と」に続いております。 撥音は後続音に影響されますので、 「ピカちゃんと」の場合、後続音は「と」の[t]という歯茎音に影響され、歯茎音になります。 例えば「本」も「本と雑誌を買う」というような文の場合、[honto]というように歯茎音になります。 |
p.96 | 第6章ポイントチェックの2が、回答を見てもわからなかったので、解説をお願いします。 じゆう、というべきところを、じうーと発音したように聞こえたので、「aとなるべきところが、bとなっている」と回答しましたが、回答は、「bとなるべきところが、aになっている」でした。 |
この問題の選択肢が唇の形になっているということから、 考えるべきポイントは子音の分類法ではなく、母音の問題になります。 子音は①声帯振動(有声か無声か)②調音点 ③調音法によって分類が行われますが、 母音は、①舌の高さ ②舌の前後の位置 ③円唇性(唇の丸め) になります。この母音の下の前後の位置と高さ、 それによって現れる母音の図が7巻p.69 図23、図24に載っております。 ③については、テキストにはイラストとしては載っておりませんが、 p.70に説明が載っております。この母音の分類を踏まえて、 ポイントチェック2番の図を見てみます。 この問題の「自由」「じゆう」の/ユ/の母音/ウ/は、 一見、唇を尖らせて発音すると思われがちですが、 それほど唇をすぼめたり尖らせたりはしていません。 日本語の/ウ/は、非円唇母音/ウ/が一般的に用いられています。 一方、唇を尖らせて円めて発音した/ウ/は、円唇母音になります。 このことを踏まえて図をもう一度見てみると、 図bは唇の円めが大きくない非円唇母音で、 図aは唇がかなり円まった円唇母音の口の開きが見られます。 また、CDの音声もご指摘の通り「じようー」と、 /ウ/が強調され円唇性が強い発音になっていることが分かります。 したがって、図bと発音するべき音が図aで発音されているという答えになります。 日本語の/ウ/の発音については、 このように円唇が強くなってしまう発音上の誤りの例が多いので注意が必要です。 |
p.103 | 自分で発音してみても軟口蓋と硬口蓋の違い、摩擦音と破擦音の違いがよく分かりません。その違いや暗記するコツ等ありましたら教えていただけたらありがたいです。 よろしくお願い致します。 |
まず、具体的にそれぞれお答えします。
・軟口蓋と硬口蓋の違い 軟口蓋と硬口蓋は、指で触ると違いがはっきり分かります(軟口蓋は押すとグイっと凹ませられるので)。ただ、軟口蓋音も硬口蓋音も舌先で作る音ではなく中舌、後舌辺りを使って発音しており、「今口の中のここを使っている」とピンポイントで認識するのはかなり難しいと思います。「口の中のこのあたりを舌で塞いで発音しているな」程度を認識できれば十分でしょう。 ・摩擦音と破擦音の違い 摩擦音は文字通り調音点に薄くすき間を作って呼気を流すことでできる「スー」という空気の摩擦の音のことで、破擦音は摩擦音を発音する最初の一瞬だけ調音点をしたなどで塞いで「破裂音」を入れた「最初の一瞬だけ破裂&その後は摩擦」の音です。 なので、発音の最初の一瞬、調音点が塞がれているか塞がれていないかという明確な違いがあり、それは音にも表れます。ただ、当然「全く別の音に聞こえる」と言うわけではありません。破擦音で調音点を塞ぐのは一瞬で、最初の破裂が終わった後は摩擦音と全く同じですから。具体的には、破擦音には最初の一瞬だけプツッっという摩擦音にはない音の「途切れ」があります(調音点を塞ぐ=空気の流れが一瞬止まるので)。聞き取れるとしたらその程度です。 最後に、暗記するコツですが、日本語母語話者は既に「日本語の発音」は完璧にできているはずです。もちろんお住いの地域や個人差によって、周りと完全一致はしないですが、少なくとも自分が話す日本語が周囲に通じている以上、しっかりと「使うべき調音点」と「使うべき調音法」は出来ているということになります。なので、テキストの表を言葉で全て叩き込むのではなく、自信が発音で使っている口の中の位置、方法の名前を確認していくというやり方をしてみてはいかがでしょうか。 「ああ、口の中のここが歯茎硬口蓋なのか」「そっか、こうやって音を作ることを●●法っていうのか」という具合です。 音声は、知識を身体をリンクさせれば、すぐに答えが分かるようになる分野です。 慣れるまで、頑張ってください。 |
p.104 | 「口腔断面図」について教えてください。P.103 の五十音図では、摩擦音、破擦音、破裂音がそれぞれ有声、無声にわかれて書いてありますが、口腔断面図では、有声、無声の区別はありません。たとえば、「歯茎摩擦音」なら、口の形は、有声、無声とも同じと考えていいのでしょうか? | 子音や母音などの「音」がどのように作られて発声されるのかという点を確認しましょう。 7巻p.69にも述べられていますが、子音は 1・調音点 2・調音法 3・声帯振動の有無 によって分類されます。 「調音点」とは、どこで息を妨げるのかという口の中の「場所」を表します。 両方の唇で妨げるのであれば「両唇」口の前の方で妨げるのであれば「歯茎」後ろにであれば「硬口蓋」「軟口蓋」となります。 「調音法」とは、どうやって息を妨げるのかという「方法」のことを言います。 摩擦させれば「摩擦音」、鼻で息をこもらせるようにするのであれば「鼻音」などとなります。 この二つの方法の組み合わせがp.104,105 の国際音声記号表で、妨げる場所=調音点を 口腔断面図で分かりやすく示しております。 しかし、先ほど述べたように子音は調音点と調音法だけでなく、声帯振動の有無で分類されます。 例えば、「さ」と「ざ」の調音点は歯茎で調音法は摩擦音で同じですが、 声帯振動の有無によって「さ」と「ざ」の違いが生まれてくるのです。 ただ、声帯振動は「声帯」で起こるものですから、口腔断面図には書かれていません。 ご質問にあるように、「歯茎摩擦音」であるならば空気を妨げる場所は「歯茎」であり、 方法は「摩擦」ですから、口腔断面図では同じになるでしょう。 p.104の図15に[s][z]両方あることをご確認ください。 |
p.112 | 実力診断テスト7の問一問目について質問です。 設問で流れる日本語学習者のアクセント、 ①お低 に低 ぎ高 り低 というアクセントは三拍目が核ということで理解できます。 しかし、 ②~④がなかなか理解できません。 特に日本語学習者の発音、 ②が低 い低 ら高 い低 ご低 は三拍目が核なのでは? ③コー高 ヒー低はなぜ二拍目が核なのでしょうか? 一拍目が核なのでは?と思ってしまいます。 |
模範解答と学習者のアクセントを以下に書きましたので、こちらを見ながら 音声を聞いてみてください。(↓低 ↑高) おにぎり 模範例のアクセント ↓↑↓↓ 学習者のアクセント ↓↓↑↓ がいらいご 模範例のアクセント ↓↑↑↑↑ 学習者のアクセント ↓↓↑↑↓ コーヒー 模範例のアクセント ↓↑↑↓ 学習者のアクセント ↑↑↓↓ ひだりて 模範例のアクセント ↓↑↑↑ 学習者のアクセント ↓↑↑↓ よのなか 模範例のアクセント ↓↑↓↓ 学習者のアクセント ↓↑↑↓ アクセントの高から低への下がり目を滝、滝の直前の拍をアクセント核と言いますが、 特に「コーヒー」のような長音がある場合は、聞き取りにくいこともあるかと思います。 ただ、解答は違いが分かるように問題が作られています。 解答を見ながら音声を繰り返し聞き、アクセント核を何度も確認するようにすると、 少しずつポイントが掴めるようになります。 最初はご質問のように「なぜ、ここに核があるのか?この音なのだろうか?」 と疑問に思うこともあると思います。実際に、そのようなご質問も多くいただきます。 ですから、一度だけでなく、違いが分かるまで「繰り返し聞く」ことが大切です。 引き続き頑張ってください。 |
p.112、113 | (7)(9)→ 声帯振動が違うとはどういうことでしょうか。どのように違うのですか? (8)「グリーン先生は」の拍感覚が違うとはどういうことでしょうか。「ないんですよ」のイントネーションは違っていないのでしょうか。それはなぜですか? (10)「100ページ」のアクセントが違っているようには聞こえないのですが、どこが違っているのですか? |
それぞれお答えします。
【(7)(9)→ 声帯振動が違うとはどういうことでしょうか。どのように違うのですか?】 子音の問題でポイントとなるのは以下の点です。 [子音] 1・調音点(口の中のどこで音を出すのか。Ex.歯茎、軟口蓋など) 2・調音法(どのように音をだすのか。Ex. 摩擦音、破裂音など) 3・声帯振動(声帯を震わるかどうか。Ex. 有声音か無声音か) 7巻のp.103の表は、50音がどのように発音されているのかが、 上記3点のポイントから示されているものです。 「どこで(調音点)どのように(調音法)声帯を震わせているかどうか」 という点を表をみて意識しながら実際に発音してみるとより理解しやすいかと思います。 さて、声帯振動とは何かという点ですが、 声帯振動がある→有声音 声帯振動がない→無声音 と、声帯振動の有無が有声音か無声音かという音の違いになります。 日本語の有声音と無声音の違いは、まず「濁音かどうか」という違いです。 p.103のサ行やタ行などを見ていただけると無声と有声の違いがお分かりに なるかと思います。また、ラ行、ヤ行も声帯振動を伴う有声音です。 こちらはp.85以降に詳しく述べられておりますので、併せてご参考になさってください。 この問題では、 (7)てんそうして → 学習者はすべて無声音で発音されています。 (9)にくを→ 学習者は「に」有声、「く」無声「を(お)」有声で発音されており、 学習者の発音は問題ありません。 つまり「妥当でない指摘(つまり学習者の発音に問題がないもの)」となり、 正答になります。 【(8)「グリーン先生は」の拍感覚が違うとはどういうことでしょうか。】 「ないんですよ」のイントネーションは違っていないのでしょうか。それはなぜですか? →この問題は「妥当ではない指摘=学習者の発音に問題のないもの」」を選ぶ問題です。 ですから、「グリーン先生は」の拍感覚は正しく、 「ないんですよ」のイントネーションはお聞きの通り間違っています。 「ないんですよ」の終助詞「よ」の発音は上昇調で発音するか下降調で発音するか、 自然に下降させるか強調して下降させるかなど、 イントネーション、プロミネンスで意味が変わってきます。意味に関わる間違いは重要な間違いであるといえます。モデル発音の「よ」が下降調に対し、学習者の「よ」は上昇調なので、Cの学習者の発音は間違いです。 【(10)「100ページ」のアクセントが違っているようには聞こえないのですが、どこが違っているのですか?】 正解が A「『100ページ』のアクセントが違う」となっていますが、 すなわち、学習者のアクセントには問題がない、ということになります。 ご指摘の通り間違っておりません。 そして、その他が選ばれないので、 学習者のプロミネンスには問題があった、ということです。 先に選択肢を確認し、異なる点を再度ご確認するといい練習になるかと思います。 |
p.112-114 | 診断テストの解答と解説を見てCDを聴いても分からないところがあります。 問題2:4拍目が核に聞こえない。 問題8:「グリーン先生はあ」と聞こえるので、拍感覚が違うと思う。 問題10:「イラスト」のプロミネンスが違う とはどういうことか? 問題18:「本社」が「ホンサ」に聞こえる。 |
問題点を個々にお答えいたします。 ・問題2 4拍目が核に聞こえない 問題2のみご質問がありましたが、他の問題についても アクセント形式を矢印で以下の通りに示しました。 矢印を見ながら再度お聞きいただき、核の位置をご確認ください。 他の問題の模範例と学習者の音声を、何度か聞き比べていただければと 違いも徐々に聞き取れるかと思います。 模範例 おにぎり がいらいご コーヒー ひだりて よのなか (↓↑↓↓) (↓↑↑↑↑) (↓↑↑↓) (↓↑↑↑) (↓↑↓↓) 学習者 おにぎり がいらいご コーヒー ひだりて よのなか (↓↓↑↓) (↓↓↑↑↓) (↑↑↓↓) (↓↑↑↓) (↓↑↑↓) ・問題8 「グリーン先生はあ」と聞こえるので、拍感覚が違うと思う。 問題は「問題文の趣旨に合うと思われるものを1つ選び、」となっていますから、 一番重要な間違いであるものを選んでください。 確かに「グリーン先生は」の助詞「は」は長く発音されていますが、 助詞を長く発音するというのは日本語母語話者でもよくすることで (考えながら話したり、ポーズを入れたりすると助詞の「が」「は」や 終助詞の「ね」「よ」などは長くなることがよくあります)、 はっきり間違っているとは言えません。 それに対して「ないんですよ」の終助詞「よ」の発音は上昇調で発音するか下降調で発音するか、 自然に下降させるか強調して下降させるかなど、 イントネーション、プロミネンスで意味が変わってきます。 意味に関わる間違いは重要な間違いであるといえますから、答えはCとなります。 ・問題10 「イラスト」のプロミネンスが違う とはどういうことか? プロミネンスとは、発話の中で特定の部分を際立たせて発音することをいいますが、 モデル発話では「100ページのイラスト」の「100ページ」の部分が強調され、 学習者は「イラスト」を強調して発音している違いが聞き取れるかと思います。 つまり「100ページ」にプロミネンスが置かれるべきのところ、 「イラスト」に置かれているので、「プロミネンスが違う」となります。 ・問題18 「本社」が「ホンサ」に聞こえる。 学習者の発音では、「ほんしゃ」の「しゃ」が、 硬い引っかかりのある「ちゃ」のような発音になっています。 本来、「しゃ」は、歯茎硬口蓋の摩擦音なので、 解答は選択肢は、Bしかありません。 ちなみに、学習者発音の「ちゃ」のような発音は、破擦音になっています。 音声の問題は、最初はなかなか聞き取れないものですが、 選択肢の音声は、それぞれ問題点を際立たせた音声になっていますので、 聞き取れないようであれば、答えを確認したうえで、 その違いが聞き取れるまで何度も聞くのも良い練習になるかと思います。 |
p.113 | 実力診断テスト7 の(10)について、学習者が発音した「イラスト」のプロミネンスがどう違うのか聞いてもわからない為、ご教示頂けますでしょうか。 |
(10)の答えはAなので、選択肢BからDは実際に学習者の発音にその問題があるということになりますが、Cについては、本来「100ページ」を強く、「イラスト」を弱く発音することで際立ちを「100ページ」に作るべきところ、学習者はどちらも同程度の強さで発音しています(「イラスト」の前でポーズを入れているため、受け取り方によっては「イラスト」の方に際立ちを感じられます)。
ですので、少なくとも「100ページ」に際立ちが出来ておらず、平坦な抑揚になっていることは感じていただけるかと思います。 この問題については、選択肢Bと選択肢Dが明らかな分、AとCで迷う方もいらっしゃるかもしれませんが、音声では明らかにアクセントの滝が「ヒャクページ」の「ペ」ではなく「―」の音に問題となっている(本来は「―」で音が低くなるはずが「ジ」で低くなっている)ので、総合的に考えて答えはAとなります。このような問題は実際の検定試験でも出題されることが多いので、選択肢一つ一つの判断をはっきりするのが難しい場合、総合的に判断することも必要となります。 |
p.113 | (12)「ひ」の漢字は、ひみこの「ひ」と書きます 回答は、無声音が有声音になっているということなのですが 有声音ということは「火」の有声音は 「び」はありませんよね? CDでは日本語の「ひ」とは違う音には聞こえますが それが「ひ」の有声音だとどうしても認識できません。 |
この問題で問われているのは、下線を引いた部分の誤用です。 「漢字」の「漢」の部分に下線がひかれていますので、 /カ/という無声音に対して/ガ/となっている点に注意して 聞いてみてください。 /ヒ/については、学習者の発音なので、日本語母語話者の/ヒ/とは 全く同じ音にはなっていないかもしれませんが、有声音無声音の違いなど 明確な異なりはありません。 |
p.113 | (20)うちの「カ」ルボナーラと少し違うなあ CDではうちの「ハ」ルボナーラと少し違うなあと言っているように聞こえますが、 解答は「軟口蓋ー破裂音」が「軟口蓋ー摩擦音」になっているということですが、「軟口蓋ー摩擦音」のハに近い音とは、どんな音になりますでしょうか? |
日本語で言うなら確かに「ハ」に近い音でしょう。 しかし、厳密に言うなら「ハ」ほど奥ではなく、もう少し手前で出ている音です。 破裂音は、言葉の通り一度「破裂」させて音と発しています。 ですから、口の中では破裂させるために 一度閉鎖させ、空気を一度とめてから破裂させて音を発します。 しかし、摩擦音は口の中でとても狭い狭めを作り、そこへ空気(呼気)を通して摩擦させて作ります。 ドイツ語や中国語、ロシア語、スペイン語などにある音です。破裂がないために口の閉鎖がなく、 口の前の方で空気を通した音、と考えていただければと思います。 |