NAFL8巻 よくある質問
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p.51-53 | 「拍」と「音節」の違いが分かりません。 |
拍(モーラ)は、通常一文字で表される単位ですが、「きょ」「りょ」などの拗音の場合は、大小2文字で表し、1拍(モーラ)です。促音(「っ」)、撥音(「ん」)、長音(「おとうさん」)も1拍と数えます。手をたたいて数を数えると拍の感覚が分かりやすいと思います。例えば「とうきょう」は何拍ですか? 「と・う・きょ・う」で4拍ですね。日本語学習者は、「とうきょ(3拍)」になることがありますが、これは拍の問題です。
日本語の音節は、子音+母音の組み合わせだけではなく、母音単独でも1音節となります。 |
p.59、60 | 複合語のアクセントについて、 60ページ中段の「後部要素が上記のどのパターンになるかさえ知っていれば」ということは、それぞれの後部要素が59ページ下段からのⅠ~Ⅳのどれにあたるか記憶しておけ!ということでしょうか?例えば、 ・「大学」はⅠパターンで「アクセント核は後部要素の1拍目」であり、 ・「時」はⅣパターンで「アクセント核は後部要素の直前」である、等々。 ・後部要素の類別でⅠからⅣのどのパターンのになるかというような、類別定義はないのでしょうか? |
複合語のアクセントは、後部要素のアクセント核によって決まります。
複合語とは単純語が二つ以上組み合わさった語ですが、 単純語のアクセントがどの組み合わせになっても、 どんなに長い単語になっても、 後部要素のアクセント核がそのまま 複合語のアクセントになります。 その後部要素のアクセントパターンがP.59-60に書いてあるⅠからⅣになります。 覚え方については、ご質問にあるように 「「大学」はⅠパターンで「アクセント核は後部要素の1拍目」であり、・「時」はⅣパターンで「アクセント核は後部要素の直前」である」 というように、個々の単語で覚えるというよりも この4つのパターンを覚えておき、複合語がでてきたら 後部要素からアクセントの核がどこにあるのかを確認するという 確認方法が汎用性のある方法かと思われます。 またテキストに載っている単語は後部要素でよく使われる語ですが、 複合語の後部要素はもちろんこれ以外にも沢山あり、 類別もすることができませんので、 まずはこのルールを覚えておくのが良いでしょう。 テキスト60ページ中段の「後部要素が上記のどのパターンになるかさえ知っていれば」 もこのような意味で述べております。 |
p.61 | 「アクセントの平板化」とは、どういうものですか。 |
平板型というのは、アクセントの下がり目が無い型をいいます。アクセントの平板化というのは、平板型以外のアクセントだったものが、平板型のアクセントで発音されるようになることです。例えば「彼氏」という語は以前は
_ 「カ|レシ」 (頭高型)  ̄ ̄ というアクセントだったものが、最近、特に若い人の間では __ 「カ|レシ」(平板型)  ̄ というアクセントになっている、ということが挙げられます。 平板化が生じる理由は、日本語のアクセントには「なじみを感じるものは平板化する」という傾向があるためだと言われています(例えば、地名の「名古屋」「長野」は東京では「な」が高くなりますが、地元では平板になります)。 |
p.102 | (14)日本語音声学(にほんごおんせいがく)の音節は に/ほん/ご/おん/せい/がくで6音節ではないでしょうか? 音節がよくわかりません |
テキストの52ページにありますように、
音節の定義や指し示すものは「音節=拍」と「音節≠拍」の2つがあります。 ①「音節=拍」、つまり自立拍も特殊拍もそれぞれ1つの音節ととらえる立場 ②「音節≠拍」、特殊拍のみでは音節ととらえず、自立拍+特殊拍で1つの音節ととらえる立場 特殊拍というのは長音、促音、撥音のことで、それ以外は自立拍になります。 これに基づいて、「日本語音声学」の音節と拍を表すと以下のようになります。 音節 ニ・ホン・ゴ・オン・セー・ガ・ク =7音節 拍 ニ・ホ・ン・ゴ・オ・ン・セ・イ・ガ・ク =10拍 「ホン」「オン」「セー」の撥音、長音の部分が特殊拍になりますから、 「ホン」「オン」(撥音)「セー」(長音)はそれぞれ2拍で1音節となります。 |
p.100 | 実力診断テストの(3)の選択肢について質問させてください。 (3)Dで、1つの音調(音の高低)には1つの発話意図が対応する。とあり、これは「誤り」となっています。これは、例えば、上昇調にも、質問、勧め、誘い、などいくつかの意図が対応するので、一つではないので誤り、という理解でよいでしょうか? |
この選択肢の誤りのポイントは、ご指摘の通り
「一つの音調(音の高低)には、一つの発話意図が対応する。」 の「一つの」という点が誤りです。 イントネーションの種類については、研究者の考え方などによって 様々な種類がありますが、 上昇調、下降調、平調の3種類にまずは分類するのが一般的です。 上昇調を以下の会話例で考えてみます。 A:帰る? B:帰るね。 C:え、帰るの? もうちょっと飲まない? 以上の会話を全て上昇調で読んでみると、 それぞれの発話意図が異なることが分かるかと思います。 Aは、帰るか帰らないかを聞く「質問」 Bは、通常平調で言うことも多いかと思いますが、 上昇調で言うことで、やや「優しい言い方」になるのではないでしょうか。 一方Cの場合、最初の「帰るの?」の上昇調を強く言うと、 詰問調になったり、また最後の「飲まない?」の上昇は、誘いになるでしょう。 以上のように、同じ上昇であっても様々な意図があるので、 この選択肢の「一つの発話意図」という点が誤りになります。 7巻P.35に他の例も載っておりますので併せてご参考になさってください。 |
p.101 | 実力診断テストの問題[7]Cに書かれている「調音者」の説明は、テキストのどこに記載・説明されていますでしょうか。申し訳ありませんが、ご教授ください。 |
調音者とは、調音に関与する舌面や下唇の各部位の総称のことで、
テキスト8巻のの40ページ下から5行目に記載があります。 |
p.101 | 問題8の4つの語の「ッ」は、いずれも有音にも無音にもなると思います。なぜ「サッシ」の「ッ」のみが無音にならないのでしょうか? |
促音は、「後ろの子音を一拍分前に引き伸ばす」ことで生じる拍です。
B サッシの「シ」は摩擦音ですが、「サッシ」という単語を 途切れさせずに発音させるために、促音を発音させるときに、 後続する「シ」の音を発音させているのです。 「サシ」と「サッシ」を比べて発音してみると、 「ッ」の箇所で「シー」というがでていることがお分かりになるかと思います。 しかし、以下の音は後続する子音が破裂音で、破裂音は発音させるためには、 一度口を閉鎖させるので、促音の部分は呼気が閉鎖で止まって「無音」となります。 A キック 「ク」[k] C カット 「ト」[t] D キップ 「プ」[p] ご質問に、「いずれも有音にも無音にもなると思う」とありますが、 個々の音の調音点や調音法をあまり意識せず、 聞いたり発音したりすると、そのように感じられるかもしれません。 ただ、日本語学習者は、日本語が母語ではないので、 発生の方法も異なりますし、聞き取れる音も異なる可能性があります。 ですから、教える立場は細かく発音の仕組みを観察し、 学習者の思ってもみない日本語の発音の間違いなどを 分析できる必要があります。そのため「音声学」の練習問題の問題と解説は、 分析的な内容になっております。テキストの参考箇所も載っておりますので、 ご参考になさってみてください。 |
p.101 | (6) ザ行の音は摩擦音で、語頭と撥音の後は破擦音になると認識していましたので、 ズが語頭にくる D、ズル と解答してしまいました(考えてみれば、A 、アンズも撥音の後なので破擦音?) 解答は、Cのポーズで、解説はザ行は母音の間は摩擦音で母音間以外は破擦音となっている、Cは調音で母音間なので…とことですが… |
ザ行の発音については、7巻p.63に述べられており、
母音に挟まれた場合は摩擦音で、それ以外は破擦音になります。 ですから、ご質問にありますように語頭は前に母音がありませんので、 破擦音ですが、撥音や促音の後の場合も母音がないので破擦音です。 しかし、長音は前の母音を引き延ばした後ですので、 長音の後は摩擦音になります。 以下に選択肢を整理いたします。 A アンズ→撥音の後なので(母音間以外なので)破擦音 B グッズ→促音の後なので(母音間以外なので)破擦音 C ポーズ→前が長母音なので母音間 D ズル→語頭なので(母音間以外なので)破擦音 |
p.102 | 問[21]を間違えました。破裂音(閉鎖音)と破擦音について同じことの別名称、と勘違いしていたようです。国際音声記号表の破裂音・破擦音の区別の仕方、その行の諸記号についてどのような違いがありどのように覚えればよいでしょうか。 |
まずは、それぞれの調音法がどのように調音されるのかを押さえてみましょう。
破裂音の場合、例えば「歯茎‐破裂音」[t]は/タテト/、[d]は/ダデド/ですが、これらの調音は舌先を歯茎に付けて息をためてから破裂させます。 破擦音の場合は、まずテキスト7のp.58の説明に「破裂と摩擦の2段階で1つの子音のようになる音」であるとありましたね。具体的には、以下のように調音されます。 「歯茎‐破擦音」[ts]の場合:破裂音[t]の後に、摩擦音[s]が響き、それから母音へ移行する 「歯茎‐破擦音」[dz]の場合:破裂音[d]の後に、摩擦音[z]が響き、それから母音へ移行する このように破擦音には破裂(閉鎖)と摩擦という2つの段階がありますが、口腔断面図では閉鎖しているところが示されるのが一般的であり、同じ調音点を持つ破裂音と同じ図となります。 以上のことから、破裂音と破擦音では調音の方法が異なるということがおわかりいただけるのではないでしょうか。 次に「どのように覚えればよいか」についてですが、 国際音声記号の口腔断面図(テキスト7付録p.104-105)の図24には「断面図を見るときのポイント」として以下の4つが提示されています。 ①口蓋帆の開閉 ②舌の位置 ③舌面の接触 ④唇の開閉 これら4つのポイントをしっかり押さえることがとても重要です。 その際に、ただ暗記するのではなく、ご自身で実際に調音されることをお勧めします。そうすることで、口腔内のどこに調音点があり・どのように調音されるのかを体感することができるでしょう。 なお『日本語教育能力検定試験 対策問題集』p.15-32「8 五十音図の発音」には、五十音ごとの「声帯振動」「調音点」「調音法」が記載されていますので、こちらもご参考いただければと思います。 |
p.102 | 問14 「にほんごおんせいがく」の音節数と拍数ですが、解説で「自立拍+特殊拍で一つの音節ととらえる」とあります。これに従うと「に ほん ご おん せ い が く」で8音節ではないのですか? |
8巻 実力診断テスト 問14についてのご質問ですが、
テキストの52ページにありますように、 音節の定義や指し示すものは「音節=拍」と「音節≠拍」の2つがあります。 ①「音節=拍」、つまり自立拍も特殊拍もそれぞれ1つの音節ととらえる立場 ②「音節≠拍」、特殊拍のみでは音節ととらえず、自立拍+特殊拍で1つの音節ととらえる立場 特殊拍というのは長音、促音、撥音のことで、それ以外は自立拍になります。 これに基づいて、「日本語音声学」の音節と拍を表すと以下のようになります。 音節 ニ・ホン・ゴ・オン・セー・ガ・ク =7音節 拍 ニ・ホ・ン・ゴ・オ・ン・セ・―(イ、長音)・ガ・ク =10拍 「ホン」→「ン」、「オン」→「ン」、「セー」→「-」が特殊拍になります。 ご質問では「セ」「イ」と音節を分けていらっしゃいますが、 「ホン」「オン」(撥音)と同様、「セー」(長音)は2拍で1音節となります。 |
p.102 | 問題21 C.の「ガ行の軟口蓋摩擦音」は普通使われるとのことですが、これはどういう音でしょうか。具体的な単語を挙げて説明いただくと助かります。 |
解説にありますように、ガ行は調音点が軟口蓋で、
調音法は破裂音、鼻音、摩擦音 のいずれかになります。 また語中では、前の音に影響されて軟口蓋の閉鎖が不十分になり、 口の中で音が破裂されず、息が漏れるような「摩擦音」になることが多いです。 ただ、「摩擦音」か「破裂音」の聞き分けは難しいかもしれません。 「破裂音」は一度口を閉鎖させてから呼気を解放させて音と発声させますが、 「摩擦音」は閉鎖させずに狭めから呼気をもらして発声させるので、 「摩擦音」のほうがやや音が弱くかすかに息が漏れるような感じがする音となります。 実際の音、単語についてですが、 『対策問題集』p.20 練習5-1、5-2で「かすかに息がもれるような音」(摩擦音) を聞くことができます。 練習5-1では、「みぎきき」「しぐれ」「かげぼし」「まごびき」など 全て語中のガ行を聞き取る練習になっており、 練習5-2では、ガ行 軟口蓋摩擦音で発音されている単語を聞き取る練習です。 こちらで実際の音を聞いてみてください。 |
p.103 | 実力診断テスト8 [24]の設問に五十音図の「あいうえお」の基準と書かれておりますが、五十音図と聞くと五十音の一覧を思い浮かべてしまうのですが、五十音図というのは舌の高さと前後位置を示した表のことを指すでしょうか。 日本語の音声Ⅰ 6-1を読みましたが、この点について理解ができなかったため、ご教示くださいます様お願い致します。 |
まず問題の解釈についてですが、50音の一覧を思い浮かべていただいても別に問題ありません。
50音は結局全て「あいうえお」の5つの母音に子音が付いたものですので。「あいうえお」の配列順の基準は50音の配列順と言えなくもないからです。 ただ、「五十音図というのは舌の高さと前後位置を示した表のことを指す」のではなく、問題文にある通り、「あいうえお」という日本語の発音に必要な5つの母音は、「舌の高さが遠いもの同士」という基準で成り立っているとお考え下さい。 では、「あいうえお」の基準について説明する前に、「母音」について確認しましょう。 調音音声学的に母音を定義すると、「口腔内にいかなる気流の妨害も伴わずに調音される音」と言えます。したがって、最も母音らしい母音は、口が広く開き、舌が低い位置にある「ア」です。「ア」は「広母音」や「低母音」と呼ばれています。(「ア」の場合、舌の前後位置が奥であっても中ほどであっても音の弁別には関係ありませんので、舌の前後位置による分類はありません。) ではこの「ア」から見て、舌の最高点が最も遠いのはどの母音でしょうか。 「ア」は「最も口の中を広く使った音」なのですから、最も「ア」から遠い音は「開口度が低い(口の中が狭い)音」です。そして「ア」が舌の前後位置による分類がない以上、口の狭さを決めるのは「舌の高さ」です。すると、日本語の母音の中で舌が高い位置にある母音は「イ」と「ウ」ですから、「ア」の次に「イ」「ウ」が配列できます。 「イ」と「ウ」は舌の前後位置が対比的ですから、そのまま「ア」(舌の高さ:低)―「イ」(舌の高さ:高/舌位置:前舌)―「ウ」(舌の高さ:高/舌位置:後舌)で三角形の頂点ができるわけですね。 次に、残された「エ」「オ」のうち、どちらのほうが「ウ」から対比的に舌の最高点が遠くなるでしょうか。この場合、「ウ」(舌の高さ:高/舌位置:後舌)―「エ」(舌の高さ:中/舌位置:前舌)―「オ」(舌の高さ:中/舌位置:後舌)となります。 以上の結果から、「舌の最高点が遠いもの同士」を順番に配列した結果、「ア」「イ」「ウ」「エ」「オ」という並びになったと説明できます。 |
p.103 | 問[24]を間違えました。五十音図の「あいうえお」の並びはほぼ頭に入っておりますが、正解「舌の最高点が遠いもの同士」という意味がよくわかりません。別の言い方、あるいはさらに詳しく教えていただけますでしょうか? |
調音音声学的に母音を定義すると、「口腔内にいかなる気流の妨害も伴わずに調音される音」と言えます。したがって、最も母音らしい母音は、口が広く開き、舌が低い位置にある「ア」だと言え、「ア」は、「広母音」や「低母音」と呼ばれています。(「ア」の場合、舌の前後位置が奥であっても中ほどであっても音の弁別には関係ありませんので、前後位置による分類はありません。)
では、この「ア」から見て舌の最高点が最も遠いのはどの母音でしょうか。「ア」は、舌の前後位置による分類がありませんので、「ア」と対比的に開口度が狭く舌が高い位置にある母音「イ」「ウ」だと考えられます。ですから、「ア」の次に「イ」「ウ」が配列できます。両者は、舌の前後位置が対比的ですから、そのまま「ア」(舌の高さ:低)―「イ」(舌の高さ:高/舌位置:前舌)―「ウ」(舌の高さ:高/舌位置:後舌)で三角形の頂点ができるわけです。 次に、残された「エ」「オ」のうち、どちらのほうが「ウ」から対比的に舌の最高点が遠くなるでしょうか。この場合、「ウ」(舌の高さ:高/舌位置:後舌)―「エ」(舌の高さ:中/舌位置:前舌)―「オ」(舌の高さ:中/舌位置:後舌)となります。 以上の結果から、「舌の最高点が遠いもの同士」を順番に配列した結果、「ア」「イ」「ウ」「エ」「オ」という並びになったと説明できます。 |